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“神の子”F・トーレスが遂に引退。
完璧主義者の足跡と終幕への期待。
posted2019/08/22 18:00
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
「予選限定のチャンピオン」
「永遠の優勝候補」
「張りぼての無敵艦隊」
好タレントを揃えながら、W杯やEUROではいつも期待を裏切ってきたスペイン代表を揶揄する言葉は、それこそいくらでもあった。彼らが長きに及んだ敗北の歴史に終止符を打ち、あらゆる中傷を称賛の嵐に変え、そして真のサッカー大国として認知されたのは、実を言えばつい最近のことである。
歴史が変わる分岐点となったのは、2008年のEUROで間違いないだろう。ここからスペイン代表は、メジャートーナメント3連覇(EURO2O08、2010年W杯、EURO2012)の偉業へと突き進むのだが、そのスタートの号砲を高らかに打ち鳴らしたのが、当時24歳のフェルナンド・トーレスであった。
好調ビジャを尻目に……。
もっとも、ドイツとの決勝で値千金のゴールを奪い、スペインを44年ぶりのヨーロッパチャンピオンへと導く立役者となったF・トーレスだが、大会全体を通した印象度では、2トップを組んだ2つ年上のパートナー、ダビド・ビジャに見劣りした。
調子が悪かったわけではない。むしろいつも以上に前向きな姿勢が伝わってきたし、スピードに乗ったドリブルで多くのチャンスを作り出し、ビジャとのコンビネーションプレーもハイレベルだった。
それでも、ゴールは遠かった。
スウェーデンとのグループリーグ第2戦で先制点を挙げて以降は音なしで、いつしか選手交代のボードが用意されると、誰もがそこに「背番号9」が表示されるだろうと予想するようになっていた。初戦からハットトリックと爆発したビジャとのコントラストが明確になっていく。