スポーツ百珍BACK NUMBER
愛すべき貴公子トーレスの名ゴール。
イニエスタ、ビジャとラストダンス。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images
posted2019/08/21 11:30
現役引退を決めたトーレスの最終試合はイニエスタとビジャがいる神戸との一戦だ。
チームメイトも驚いたセルタ戦。
アトレティコ時代(第2期)
2017年2月12日/セルタ戦
チェルシー、ミランでの苦悩を経て、トーレスは2014-15シーズンにアトレティコに復帰した。ただしかつてのエース扱いとは違い、グリーズマン、マンジュキッチ、ジエゴ・コスタらがそろう前線のバックアッパー的存在になっていた。
それでも2015-16シーズンにはリーガで11得点を奪うなど、シメオネ監督の下で再生。そしてゴールへの嗅覚が衰えてないのを証明したのは、2017年のセルタ戦だった。
左サイドのカラスコからのパスを受けたトーレス。この時点でゴールとGKの位置はまったく見えておらず、マーカーも背負っていた。しかしトーレスはボールをわざと浮かせて、ポンと蹴り上げる。するとボールは絵に描いたような弧を描き、ゴール右隅へキレイに収まった。
現地の『マルカ』、『AS』紙にも「キャリア最高のゴールじゃないか?」と言わしめたゴラッソ。セルタ守備陣だけでなく、トーレスを祝福に来たチームメートも「マジかよ」という表情を浮かべていたのは、ファンにとっては痛快だろう。
ラストダンスは盟友たちと競演。
トーレスの実績を細密に振り返った時、イニエスタのタイトル数、ビジャのゴール数には及ばないかもしれない。
しかし「ああ、あのシュートはシビれたよね」と各クラブのファンが語りたくなるゴールがあるのは、トーレス自身が“持っている”からこそだ。
8月23日、彼にとっての引退試合の相手はイニエスタ、ビジャらが所属するヴィッセル神戸戦である。かつての盟友と対峙し、有終の美を飾るゴールを決めてくれるか——。きっとトーレスなら、何かを起こしてくれるはずである。