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女子レスリング史上最大の一騎打ち。
川井梨紗子を強くした伊調馨の挑戦。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byYUTAKA/AFLO SPORT

posted2019/07/08 18:15

女子レスリング史上最大の一騎打ち。川井梨紗子を強くした伊調馨の挑戦。<Number Web> photograph by YUTAKA/AFLO SPORT

女子57kg級のプレーオフでは川井梨紗子が伊調馨(左)を破り、世界選手権代表の座を獲得。東京五輪へ向けて大きな一歩となった。

冷静な判断を下した川井。

 振り返ってみれば、昨年12月の天皇杯決勝でも似たような攻防があった。

 第1ピリオド終盤、伊調がアクティビティタイムを受けている時に川井はタックルを成功させ、場外へ押し出した。あと何秒か待っていれば、川井はアクティビティの1点を得ることができた。結論からいえば、ここが勝負の分かれ目となった。

 今回も伊調に押し出されながらテイクダウンを喫していたら2点をとられ逆転されていた。関係者からは「あの場面で川井はあえて進んで場外に出たのでは?」という声もあった。いみじくも川井は言う。

「2ポイントとられていたら私の負けで、1ポイントだったら勝つことがわかっていました」

 試合終了間際、もつれた攻防の中でも冷静な判断を下せたことが勝因か。

伊調「梨紗子が強かった」

 一方、敗れた伊調は負けじ魂とスポーツマンシップが入り交じった感情を吐露した。

「悔しい気持ちだけど、ここまでやるべきことを準備してきたので後悔はないです」

「自分が弱かったとはいいたくない。梨紗子が強かったことが今日の勝敗を分けたんだと思います」

 川井がタックルに何度入っても、そのつど伊調は切っていた。ハイライトは第1ピリオド終盤、川井が相手の足を大きく持ち上げながらも伊調はバランスを崩さずポイントを与えなかった場面だろうか。

「細かい点をいえば(自分にも)勝ちきれた部分はあったと思います。そこをしっかり自分のものにできなかったことが悔しい」

 道なき道を往く。伊調の前人未到の挑戦はひとまずピリオドを打った。しかしながら今回も最後まで競り合ったことで多くの人々を魅了したことは確か。

【次ページ】 「2人とも東京五輪に……」の声も。

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