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女子レスリング史上最大の一騎打ち。
川井梨紗子を強くした伊調馨の挑戦。
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2019/07/08 18:15
女子57kg級のプレーオフでは川井梨紗子が伊調馨(左)を破り、世界選手権代表の座を獲得。東京五輪へ向けて大きな一歩となった。
伊調の挑戦は活力を与えている。
50代半ばの筆者が耳をそばだてると、伊調と同じ30代半ばから上の世代に“シンパ”が多いことにも気づく。
とりわけ30代半ば以降の現役選手、あるいは元選手からの支持は絶大のようだ。50過ぎの別競技の指導者は次のようなエールを送った。
「4回もオリンピックで金メダルを獲っているのに、いまもなお挑戦し続けている。伊調さんは生き方そのものがカッコいい。年齢から来る衰えやケガもあると思うけど、とにかく頑張ってほしい。伊調さんの活躍は日々の生活の励みになっています」
注目を集めた一戦は“予想通り”の接戦に。
伊調が復帰してからの川井との直接対決は1勝2敗。直近の明治杯決勝ではデッドヒートを繰り広げる中、川井が薄氷の勝利を収めている。
冒頭の運転者は気になる言葉を続けた。
「体付きを見たら川井の方がレスラーらしい体付きをしているよね。対照的に伊調の方は昔はレスラーっぽいと思ったけど、いまは細すぎるんじゃないですかね」
すぐさま異論を挟みたかったが、そこまで筆者も子供ではない。巷でレスリングの話題をしてもらっているだけでも十分だと思った。運転手はこんな言葉で話題をしめた。
「伊調と川井が闘ったふたつの決勝はどちらとも試合終了間際まで勝負はもつれた。今日も同じような感じになるんですかね」
はからずも運転手の予感は的中する。
今回も第2ピリオド終了間際、伊調は2-3のビハインドから川井を押し出し、3-3のタイスコアへと持ち込んだ。しかしながら川井は第2ピリオドにもつれた攻防の中、ネルソン(主に首と脇を固めながらフォールに持ち込む技)で2点をとっていた。この場合、ビッグポイントをとった方が勝者となる。