フランス・フットボール通信BACK NUMBER
欠場してもチームを勝たせるエース。
ケインがトッテナムで特別な理由。
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byAlexis Reau/L'Equipe
posted2019/06/01 11:30
劇的な逆転勝利で決勝に駒を進めたトッテナム。ケインのロッカールームでの檄がチームに勇気を与えた。
創造性溢れるケインのプレー。
ケインが先発の11人に入っているか否かで、トッテナムはまったく異なるチームになる。
「ポチェッティーノの攻撃的なスタイルは、実際のプレー同様に頭の中の判断も速い選手たちの流動性がベースになっている」とハザードはいう。
「ソンやデル・アリ、(クリスティアン・)エリクセン、ルーカス、(エリック・)ラメラらが際限なく動き回る。そんな中でハリーはちょっと機動性を欠く。だがそれでも彼は、ボールをなるべく高い位置で奪おうと激しくプレスをかけ、前線の起点となってDFに脅威を与える。
最大の特徴のひとつは相手DFを剥がしたり無力化して、チームメイトが中盤から攻めあがるためのスペースを創り出す能力だ。
同時に彼はオーソドックスなターゲットマンでもあり、抜け目がないうえに戦いにも強く空中戦も決して怯まない。優れた創造力も併せ持っており、イングランドの9番の中ではアシスト能力にも長けている。
創造性豊かな彼のパスを見るのは大きな喜びだ」
周りの選手たちが、全員成長した。
ケイン不在の間、チームはアタッキングサードの動きを強化し、相手のバランスを崩すためにさらに加速しなければならなかった。
その結果どうなったか――。
ソンはひと皮むけて速さに安定感が加わり、ルーカスは頼りがいのあるストライカーになった。
「ハリーがスタティックだった選手たちの関係をダイナミックにした。今の彼らはとても危険だ。
ハリー以上に優れたプレーのビジョンを持ち、効果的に得点を決められる技術のあるセンターフォワードがいるだろうか。しかもチームにコレクティブに貢献しながら。私は彼以外に誰も知らない」