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日本企業のデザインで進む“バルサのカンプノウ改築”建築士に直撃!「100年先を見越した計画へ」「再開発には5つのプロジェクトが…」

posted2022/03/21 11:00

 
日本企業のデザインで進む“バルサのカンプノウ改築”建築士に直撃!「100年先を見越した計画へ」「再開発には5つのプロジェクトが…」<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

特別にカンプノウで撮影した日建設計のメンバー。“新カンプノウ”はどんなものになるのだろうか

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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Daisuke Nakashima

シャビ・エルナンデス監督の指揮下で深刻な不振を脱し、先日のエル・クラシコで宿敵レアル・マドリーに敵地で大勝したバルセロナ。その本拠地カンプノウは2022-23シーズンから「Spotify」がネーミングライツを得たとのニュースが流れる一方、日本企業「日建設計」がデザイン・設計を務めた改築計画も進んでいる。今年1月に帰国するまで現地バルセロナでプロジェクトに携わってきた3人の建築士に話を聞いた(全3回の第1回/#2,#3も)

――まずはそれぞれの自己紹介と、プロジェクトにおける役割をお願いします。

野村映之「意匠設計担当の野村と申します。バルセロナに来てからは5年が経ちました。コンペから数えると6年このプロジェクトに携わっています。私の主な仕事は、設計で言うと屋根とスタンド部分。それと『外装』と言われる、外のファサードの部分をメインでやっています。あとはサブコンサルタントのコーディネーションと契約関係も多少やっています」

伊庭野大輔「私も野村と同じで、意匠設計担当です。野村と風間と同様、コンペのスタート時から関わっています。カンプノウのプロジェクトの中ではチームリーダーと呼ばれるポジションで、野村はチームAのリーダー、私はチームBのリーダーです。スタジアム全体のコンセプトから平面計画全般に関わっています。全体のデザインの調整や、VIPやミュージアム、ショップなどの配置計画、さらにはコンコース、階段の動線計画など全般的な平面計画を担当しています」

風間宏樹「2人と違って私はエンジニアで、専門は構造設計です。構造体の設計を担当しています。3年ちょっとこっちに来ていますけど、このプロジェクトは現地のエンジニアリング事務所と組みながら仕事をしていて、最初はマドリードにある事務所に2年半ぐらい一人で出向して、そこのメンバーとともに構造設計をやっていました」

大がかりな変更の連続だった

――それでは本題に移ります。プロジェクトはここまで順調に進んでいるのでしょうか?

伊庭野「コンペに勝利したのが2016年の3月で、その時には2021年に完成する予定でしたので、順調に進んでいるとは言い難いですが、いくつかの準備工事も終わり、周辺の工事も着々と進んでおり、少しずつ前に進んでいます。ただ実は今年(2021年)の初めにようやく実施設計が完了したのですが、会長がラポルタ氏に代わり、FCBの体制が大きく変わったことに伴い、今までの設計条件も少し見直すことになりました。現在はその設計変更業務を行っています。

――どのような変更を求められたのでしょうか。

伊庭野「まずはこの5年で世の中の環境への配慮の視点が大きく変わったことに伴い、よりサスティナブルなスタジアムにしてほしい、という依頼がありました。またテクノロジーに関しても同様にこの5年で大きく世の中が進んでしまったため、さらに100年先を見越した計画へと変更を求められています」

【次ページ】 「周辺の街ともっとつながるような提案をしてほしい」

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