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欠場してもチームを勝たせるエース。
ケインがトッテナムで特別な理由。
posted2019/06/01 11:30
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph by
Alexis Reau/L'Equipe
今季のトッテナムがCL決勝まで勝ち上がった要因のひとつにハリー・ケインがあげられる。しかしケインは、ソン・フンミンやデル・アリ、ルーカスらのように、必ずしもプレーでチームに貢献しているわけではない。ピッチに立とうが立つまいが、チームに対して厳然たる影響力を発揮する。それこそがケインという存在の真骨頂である。
いったいどういうことなのか。
『フランス・フットボール』誌5月28日発売号で、フィリップ・オクレール記者が特異な存在感を放つケインの謎を解き明かす。
監修:田村修一
ケインがいなくてもトッテナムは強い!?
数字だけを考慮すれば、今季のハリー・ケインはトッテナムというチームにとって疫病神以外の何ものでもない。2年前にも痛め、そのときは8試合の欠場(プレミアリーグとCL)を余儀なくされた足首靭帯の損傷で今季も14試合を休まざるを得ず、ウェンブリーと新スタジアムのピッチに立てなかったのだから。
奇妙なことに、彼の欠場はチームに大きな影響を与えなかった。
トッテナムに復帰した2013-14シーズン以降、出場した試合の得点の40%にケインはかかわっている。具体的に言えば、リーグ戦とCLでチームがあげた354点のうち、142点が彼の得点かアシストによる。それだけの貢献をしているのに、欠場が成績に影響を及ぼさない。
これはどういうことなのか。
彼を欠いたこの1~2月の5試合を、トッテナムは全勝で乗り切った。CLでドルトムントを3-0と粉砕したのをはじめ、リーグも4連勝。首位を行くシティとリバプールに勝ち点5差まで迫り、トップを射程に捉えたかにも見えた。
ところが彼の復帰とともに失速が始まる。ピッチに戻ったケイン自身は、5試合で3ゴールと好調だった。だがチームは、この間わずか勝ち点1をあげるのみに留まった。
さらに2カ月後、彼の欠場をよそに、チームはエティハドスタジアムで3-4という歴史的な戦いを演じ、初のCL準決勝進出を果たした。そして準決勝ではアヤックスにもアウェーで3-2と競り勝ち、ついに決勝にまで到達したのだった。