サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
覚醒を迎えた冨安と吉田が揃えば、
ロングボール戦術はもう怖くない!?
posted2019/02/01 07:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Takuya Sugiyama
強豪によって引き出されたのは、日本代表DF冨安健洋(シント・トロイデン)のたぐいまれなる能力とポテンシャルだった。2019UAEアジアカップ準決勝イラン戦は、後に「冨安がベールを脱いだ試合」として記憶に刻まれることになる。そんなことを感じさせる90分間だった。
1月28日のイラン戦。吉田麻也とセンターバックでコンビを組んで先発した冨安は、今大会4得点のイランFWサルダル・アズムンにまったく仕事をさせなかった。
まずは、高さで優位に立った。身長は冨安が188cm、アズムンは186cm。空中での競り合いではほとんど勝り、危険なシーンを作らせない。
体の使い方も上手かった。半身で体を当てて一瞬で前へ出る動きにはしなやかさとアジリティも備わっており、カウンター時のスピード対応も危なげなかった。
吉田が冨安にロングボールはお任せ。
中でも光ったのは、イランのロングボールを的確な予測によるポジショニングでことごとく跳ね返したシーンだ。これにはコンビを組んだ吉田が「ロングボールは、ほとんどトミ。トミが『オッケー!』と言っていつも行ってくれたので、楽にできた」と手放しとも言える褒めっぷりだった。
冨安との競り合いに勝てないと感じたアズムンは次第にサイドに流れるようになり、自ら怖さを放棄していった。イランの日本攻略作戦は、アズムンに当てるロングボールのこぼれ球を狙うことだったが、結果的に冨安のプレーは、アジアで39試合無敗を誇り、ロシアW杯ではスペインに0-1、ポルトガルに1-1という大健闘を引き出した名将カルロス・ケイロスの戦術を無力化させた。
「最初は意外と(アズムンの体格が)大きいと思ったのですが、相手の1本目のゴールキックか何かで、(アズムンが日本の)DFラインの後ろに立っていて、僕が先に前に入ってファウルをもらった。あれで自分のリズムをつかめて、主導権争いでリードできたと思う」
20歳の伸び盛りは、ファーストコンタクトで競り勝ったことが大きかったと胸を張った。