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最強東福岡のCBは今、ビール営業中。
千代反田充が思う「選手権」の魔力。
text by
菊池康平Kohei Kikuchi
photograph byKohei Kikuchi
posted2018/12/29 18:00
スーツ姿でサッカー人生と社会人生活を語る千代反田充。彼のセカンドキャリアは始まったばかりだ。
かつての肩書は通用しない。
ただ、実際に社会人生活を始めると「かつての高校サッカーのスター」、「元Jリーガー」という肩書は、ほとんど生きないと知る。「東福岡のレギュラーで、Jリーガーだった千代反田充」だと、ほぼ気づかれないのだ。
「(気づかれるのは)半年に1回くらいですかね。名刺を見てもらったり、相手が知らなくても一緒に行く同僚が『元サッカー選手です』と他己紹介で気づいてもらえるくらいです。その時はJリーガーではなく“どのJリーグチームにいたの?”って聞かれるくらいで、東福岡なんだという会話になります。でも理想はそういうのと関係なく、普通に仕事できるようになりたいんですけどね。まだほど遠いです」
現在の仕事はいわゆる営業担当。酒販店(酒屋)さんなどをまわり、他社製品が入っているところをアサヒビールに変えてもらったり、すでに扱っていただいている店舗へルート営業するなど、関係づくりに励んでいる。
「2016年4月入社ですので、次の4月で丸3年です。最初の頃は全く分からず、営業帰りの駅で『この後、どうしよう。何やるんだっけ?』とフリーズしていました(笑)」
それでも千代反田は、サッカー人生で失敗しても周囲からのアドバイスに耳を傾け、自分なりに前に進んできた。そうして培ってきた姿勢と今の経験から、現在サッカーをしているプレーヤーたちに伝えたいことがあるという。
「現役時代は、競技に集中しようと外部の方々と会うことは極力避けていたんです。でも就職活動や仕事では多くの人に会い、コミュニケーションをとっていく必要性を感じています。だからこそ、今サッカーをやっている人には『練習以外の時間をもっと有効活用しよう』と伝えたいですね」
競技とともに、色々な仕事をしている人達と出会ったり、読書するなど現役のうちからアンテナを張っていくことは大切だ。世界が広がり、人生が豊かになるきっかけとなりうる。
高校サッカーの影響力は大きい。
選手権に出場する中にはJリーグに進む逸材がいる一方で、大学進学、そして社会へと出ていく選手が大半である。大学、プロ、そして社会人を経験した千代反田だからこそ、伝えられるメッセージがある。
「高校選手権に出てることは本当に幸せなことです。もちろん努力の結果だと思いますが、出たいと夢見ている選手は日本中に数多くいます。親や家族や少年時代にいっぱいサポートしてくれた指導者などの想いや、地元の方々の想いを背負って頑張って欲しいです。
これまでにお世話になってきた頭に浮かぶ方々のためにも、目一杯やって『あいつ頑張ってるな』と言われるプレーをしてほしいです。僕はプロで12年やってましたけど、いまだに『東福岡の千代反田』と言われるので。高校サッカーの影響力は本当に大きいですからね」