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最強東福岡のCBは今、ビール営業中。
千代反田充が思う「選手権」の魔力。 

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菊池康平

菊池康平Kohei Kikuchi

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photograph byKohei Kikuchi

posted2018/12/29 18:00

最強東福岡のCBは今、ビール営業中。千代反田充が思う「選手権」の魔力。<Number Web> photograph by Kohei Kikuchi

スーツ姿でサッカー人生と社会人生活を語る千代反田充。彼のセカンドキャリアは始まったばかりだ。

30代にして新卒の就職活動。

 そんな中、当時、名古屋グランパスGMだった久米一正から声を掛けられる。グランパスでスクールコーチをすることになったのだ。

「トライアウトを受けていた時に、誘われていたんです。自分は指導者向きではないと思って断っていたんですが、妻から『決めつけているだけで、もしかしたら教えるのが好きかもしれないじゃん。やってみれば』と言われ『そうかもしれない』と思い久米さんへ電話しました。『このタイミングか』と言われましたが(笑)、入れてくださったんです」

 子供たちの未来に携わる仕事だったので、一生懸命に指導したが、ワンシーズンで辞めた。サッカーの世界以外のことが知りたくなったのだ。

“無職”となった千代反田は、普通の社会人となるための一歩を模索した。

「就職活動の仕方が全くわかりませんでしたが、正月から手探りでリクナビやマイナビに登録してみました。名古屋の不動産会社の面接に行って、選考の一環として何日か社員の営業に同行したりしました。

 あるテレビ局の募集を見つけたこともありました。課題を何度も書き直して出したら書類選考に通ったんです。興奮していたら、妻から『面接まではだいたいの人が進めるから』と言われ、全く何の準備もせずに面接に臨んだんですよ。部屋に入ったら5人くらい座っていて役員もいましたが、入社したい細かい理由も用意しておらず、結果ボロボロでした。

 後ほど知ったんですが、面接に進めたのは1000通以上の中から20人くらいだったみたいで、妻に文句言いましたよ(笑)」

大企業に入る難しさ。

 ほかにも多くの企業の面接を受けたが、この年齢での就活は千代反田にとってサッカー以上に難しいものだった。「志望理由など文章ひとつ書くのにも苦戦しました。大学時代の先輩などに企業へ提出する履歴書などを添削してもらったりしてましたよ」と悪戦苦闘しながらも就職活動を続け、アサヒビールへの入社を勝ち取った。

「サッカー選手は引退後に指導者やサッカーに関わる仕事に就く人が多いですし、そのぶん競争も激しいです。その一方で引退したアスリートで大きな会社に進んだ人は少ない。僕がアサヒビールで活躍することで、微力ながらセカンドキャリアの選択肢を広げたり、アスリートの価値を高められたら嬉しいです」

【次ページ】 かつての肩書は通用しない。

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