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鷹の新1番打者・牧原大成は規格外!
“奇跡の育成世代”の遅れてきた男。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2018/09/12 08:00
昨季の怪我からも完全復活し、今年はチームの原動力として活躍中の牧原大成。
固定観念にとらわれない一番打者。
冒頭で記したように、とにかく早いカウントから勝負を仕掛ける。
9月10日時点で207打席、193打数67安打、打率3割4分7厘を残している。うち、初球打ちが40打数21安打、1ボール0ストライクが19打数11安打、2ボール0ストライクが2打数2安打、3ボール0ストライクが打数なしの1四球。
つまり0ストライクに限定すれば、61打数34安打となり、打率5割5分7厘と驚異的な数字が弾き出されるのだ。
1番打者は投手に球数を投げさせるのも役割とされるが、牧原は固定観念にとらわれることなくバットを出していく。
「攻める姿勢はもともと二軍でやっていたこと。自分は振っていく中で感覚を養うタイプなので、それを変えずにやるのが今は大切なのかなと思っています」
その是非はともかく、一振りで仕留める技術の高さにはアッパレの一言しかない。
「じつはダンスに興味があった」
牧原の際立つ打撃力のルーツは少年時代にあった。
本人いわく「小学生の頃は遊びの野球で、厳しい環境に身を置いたのは中学生になってから」。その頃、父が打撃マシンを自宅の庭に設置した。しかも2台だ。1つは直球、もう1つは変化球を練習するためだった。
「毎日バットを振りました。父が仕事で遅くに帰ってきた時でも叩き起こされて、夜11時くらいから打ったこともありました」
直球マシンは打席までの距離がどんどん縮まっていき、「体感で170キロはあった」というスピードボールを打ち返していたという。
「プロに入ってからもたまに実家に帰った時は打つんですけど、速過ぎて当たらないです(笑)」
熊本・城北高に進学後ももちろん野球部でバリバリ活躍したが、甲子園出場はならず。牧原は何が何でもプロへという球児ではなく、別の夢も密かに抱いていた。
「じつはダンスに興味があったんです。浜崎あゆみが好きで、ミュージックビデオに出てくるバックダンサーがとてもカッコよくて憧れました。別にダンスなんてやったことないし、ライブに足を運んだわけでもない。ただ、漠然と、高校卒業したらソッチ系の専門学校に行こうかなと考えたこともありました」
プロのスカウトが学校を訪れたが、同級生のエースを見に来たのだと思っていたくらいだった。