ぶら野球BACK NUMBER
ロシアW杯の喧噪を抜けて……。
ぶらり鎌ケ谷で清宮幸太郎を見る旅。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byYasutaka Nakamizo
posted2018/07/02 10:30
鎌ケ谷スタジアムのバックネット裏のシートにて。ひと足お先に「今年も夏が来た」と感じた瞬間。
やっぱり、清宮の驚異的な打球!
3回裏1死一塁で迎えた第2打席、内野席から「がんばれ鎌ケ谷の星~!」なんつって声援が飛ぶ中、8球目を捉えた打球はセンターへ。これはセンターフライかな、と空を見上げたらボールが落ちてこない。おいおいまさか……。なんとそのままバックスクリーン横に飛び込んでしまった。
よしっ! サボりおじさんも俺も思わずガッツポーズだ。
長嶋さんが王さんと自分の違いを「バットとボールが当たる角度。ワンちゃんの打球はホームランになる角度なんだ」と答えたというが、打った瞬間は外野フライと思われた打球がスタンドインするのは天性のホームランアーティストの証明だ。
どよめきの直後、大きな歓声と拍手が背番号21に送られる。
これで二軍降格後は15戦で10本塁打という驚異的なハイペースだ。まだ19歳、焦る必要はない。いつか野球ファンは「2018年の清宮幸太郎」を嬉々として語る時が来るだろう。そう思わせてくれる一発だった。
試合中に「ラジオ体操」もある二軍戦の風景。
勝敗が重要な意味を持つ一軍の試合とは対照的に、二軍戦はシーンごとに選手個々のプレーに盛り上がる。
日ハムのセカンドを守る渡辺諒が好守連発、対照的に巨人のゲレーロは浅間大基のレフト線の打球を後ろに逸らしランニングホームランにしてしまった。贔屓球団の枠を越えて、いいプレーには称賛を、ズンドコプレーには溜め息をみたいな客席だ。平日午後から汗と泥にまみれる選手たちも快適なドーム球場でプレーしたかったら、ここから這い上がるしかない。
日常のペナントレースからちょっと外れた、イースタン・リーグの光景。清宮がセカンドライナーに倒れた直後の5回終了時に、なんと球場全体で「ラジオ体操」の時間もある。青空の下で汗ばんだ身体を動かし、勝ち負けが大きな意味を持たない野球をのんびり見る。
W杯ほどガチじゃない、一軍の試合ほどマジじゃない。そんな二軍ぶら野球も悪くない。
まだ東京ドームのナイターまでは時間がある。そして、俺は清宮幸太郎の第4打席を2杯目のコーラ片手に待ったのである。