プロ野球亭日乗BACK NUMBER
坂本勇人とジーターに4つの共通点。
プレーはもちろんリーダー性も進化。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/06/05 08:00
童顔のルックスながら走攻守に優れ、キャプテンシーも身につけた。坂本勇人は今や巨人の大黒柱だ。
松井秀喜から伝授された「右軸」。
ジーターはボールを呼び込めるだけ呼び込んで、逆方向へ鋭いライナーを打ち返す中距離打者である。ボールを長く見て、逆方向に打てるから、走者を置いて何とかできる打撃の幅も特長だった。
クラッチヒッターと言われた所以である。
「自分の中では軸は体の中心線だと思っていた。それを松井さんに聞いたら、もっと右側を軸にして打った方がボールを長く見られるし、変化に対応できて確率が高くなると言われたんです。それまでの自分の頭には右軸という発想がまったくなかったので、まさに目を見開かせられる思いでした」
こう語る坂本は2016年のキャンプで、臨時コーチを務めた松井さんから右軸のバッティングを伝授された。その結果、そのシーズンはキャリアハイの打率3割4分4厘を残して初の首位打者のタイトルを獲得した。秘密は右方向への打球の変化だった。
'14年の右方向への打率はわずか1割8分8厘(85打数16安打)、'15年も2割8分4厘(88打数25安打)だったのが、'16年には3割9分4厘(104打数41安打)へと跳ね上がっている。しかも'17年には何と4割1分2厘(119打数49安打)まで上昇。今季も6月2日現在で44打数19安打の打率4割3分2厘と、右方向の打球が坂本の打撃を支える中心となっている。
右軸の打撃を習得してから、ボールを長く見られるようになって出塁率も上がっている('15年の3割5分3厘から’16年は4割3分3厘)。クラッチヒッターと呼ぶにふさわしいチャンスでの強さも、ジーターと同じ右方向への技術的な裏付けがあるからだった。
キャプテン就任で弟キャラが一変。
そしてジーターとの共通点のその3が、強いキャンプテンシーなのである。
坂本は阿部慎之助内野手や長野久義外野手ら年上の打者に囲まれて弟キャラだった。それが変わったのは、'14年オフの優勝旅行で当時の原監督から主将に指名されてからだった。
「これからキミの言葉はキミだけのものでなくなる。すべて巨人のキャプテンとしての言葉になるんだ。だからそのことを意識して発言し、行動するんだよ」
そのとき原に説かれた言葉だった。
「キャプテン就任以降、チーム内での振る舞いやメディアへの対応も変わっていった」
こう語っていたのは、ある球団関係者だ。