“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「俺は走れるようになったんだ!」
新潟・早川史哉、白血病との戦い。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/03/11 09:00
リハビリに励む本人のブログには、「明日も楽しむぞ! レッツトライ!!!」という言葉が。
「たぶん恐怖は一生消えないと思います」
話は2月21日に戻る。
新潟の名産などを食べながら、彼は自分に起こったことを細かく話してくれた。周りからすれば想像を絶するほど辛く、重い経験であり、簡単には表現できないものが多くあった。しかし、こちらのそんな重い感覚とは裏腹に、彼自身はハキハキとこれまでの思いを話していった。
その姿を見ているだけでも、この2年間で、いかに彼が人間としての強さを身につけていったのかが分かった。それと同時に、時折見せる影の部分をも、リアルに感じることができた。
「病魔からの復帰」という言葉だけだと、非常に聞こえは良い。だが、一番大切なのは早川史哉という1人の人間の命なのである。その挑戦が命を縮める無謀なチャレンジであっては、意味がない。
「たぶん恐怖は一生消えないと思います。今は治ったかもしれないけど、今後も身体のどこかにまだこの病気が隠れているかもしれないという恐怖と戦わないといけないんです。いつどこから出て来るか分からないですから。だからこそ、きちんとその恐怖と向き合いながら前進していかないといけないなと思っています」
4時間にわたった彼との会話は、「生きる」ということはどういうことなのかを、もう一度お互いに問いかけ合うような、濃密な時間となった。
たとえ復帰できなくとも、失敗ではない。
「また会いましょう。これからもよろしくお願いします」
別れの際、丁寧な言葉で挨拶する彼の姿に見て、筆者自身に自然と覚悟と決意が生まれるのを感じた。
今はまだ、果てしない戦いの日々が始まったに過ぎない。彼はどこまでも続く孤独なレースを走り出したばかりなのだ。
しかし、彼は決して1人じゃないと信じる。家族、多くの仲間、そして復帰を願うアルビレックス新潟というクラブ、サポーターの存在がある。
早川史哉は決して屈しない。
たとえプロサッカー選手としてピッチに復帰することができなかったとしても、それは決して失敗ではない。そこに至るまでの彼の経験、考え方、そして前進する勇気こそが、きっとその姿を見た者たちの大きな財産となるはずだ。