“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「俺は走れるようになったんだ!」
新潟・早川史哉、白血病との戦い。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/03/11 09:00
リハビリに励む本人のブログには、「明日も楽しむぞ! レッツトライ!!!」という言葉が。
「チームとしてもサポートしていきたい」
プロアスリートとしての復帰を視野に入れて、後遺症が出る可能性があるステロイド剤や放射線の投与の量も少し減らしてもらった。
さらにクラブからは、「チームとしてもサポートしていきたい」という言葉をもらい、プロ契約こそ一時凍結という形をとったが、治療費などをまかなう基金を創設してもらうなど、様々に力強い支援を受けた。
「みんなが支えてくれる温かさも感じた。だからこそ、復帰を目指して治療に専念することができたんです」
1年を越える入院生活を終え、昨年6月には病院での集中治療も一段落して退院することができた。
「俺は走れるようになったんだ!」
自宅での生活に戻った彼は、「少しだけなら動いていいよ」という主治医の言葉をもらい、期待に胸を躍らせながらジャージに着替えて自宅の前の道を走り出したという。
彼にとっては大きな一歩だった。だが、それと同時に、これから待ち構える不安の入り口でもあった。
病気をする前には何気なく走っていた道。だが、1年以上のブランクを経て感じたのは……ただ走るだけの行為が、こんなにも楽しくて、自分にとって大切な瞬間だったのか、ということだった。
「俺は走れるようになったんだ!」
気持ちが高ぶってしまい、ジョギングのつもりだったのに、気づくとスピードがどんどん上がっていっていた。
「どうしても病気の前の自分のイメージが残っていて。軽く走るだけのつもりだったのに、どんどん行ってしまった。勝手にスピードのギアを上げてしまったんです……」
直後、彼の身体に異変が生じた。