ぶら野球BACK NUMBER
“最も有名なスーパースターの息子”
長嶋一茂の壮絶な野球人生を読む。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byMakoto Kenmizaki
posted2017/10/04 11:00
ヤクルト入団直後の長嶋一茂。入団前から、その圧倒的な筋力やスター性について、多くのマスコミを賑わせていた。
敗者だからこそ見えるものもあるのだ。
「俺は負け犬だ」
生まれてからずっと負けっ放し、そして今も負けている。敗者だからこそ見えるものもあるのだと一茂は言う。
大学日本代表に選出されようが、ドラフト1位入団しようが、プロの世界ではほとんどなにもできなかった無念さ。
天真爛漫のサクセスストーリーとも取れる前半部とは対照的な、後半の重い展開の数々。だが、もしも一茂が勝ちっ放しの人生ならば、この本は平坦なおぼっちゃんの自慢話で終わっていただろう。
長嶋茂雄になろうとした野球少年は数千万人いれど、長嶋茂雄の息子だったプロ野球選手は日本にこの男しかいない。
後年、あの秋元康からこんな言葉をかけられたという。
「一茂クン、タレントは芸を売り物にするものだ。君にはそれがないかわりに、生き様というすごい売り物がある」