福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
オーストラリアをハメた“前プレ”。
福西崇史が見た快勝劇と伸びしろ。
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/09/01 13:15
この日はパス回しよりもデュエル。ハリルホジッチ監督の思惑が投影された守備陣形で、ゲームプランを完遂した。
前線からのプレスがハマって中盤も積極的に。
日本はキックオフ直後から大迫、乾、浅野の前線が、最終ラインからのビルドアップにプレッシャーをかけていった。これが相手のパスミスを生んだり、彼らがパスコースを限定することで後ろの選手もボールの取りどころを予測しやすくなった。
中盤の3人、特に山口と井手口は最初、相手の2シャドーであるロギッチ、トロイージの動きを気にしていた印象でした。“ここにボールを入れさせちゃいけない”という意識で、前から行くかスペースを埋めるかのどちらを選ぶかを考えていたのではないでしょうか。
ただ前線のプレッシャーがハマっていたことで、2人も「前からボールを奪いに行ける」と積極的な姿勢を出していけた。守備面で連動したことで日本はリズムをつかんで、浅野の先制ゴールにつながりました。
また先制点の前には乾が3バックのミリガンを引き出しておいて、大迫のポストプレーからミリガンの空けたスペースに長友が飛び出して、チャンスを作りました。浅野のヘディングシュートは枠を外れたけど、中盤でボールをしっかり動かしつつ、押し込んでいく駆け引きができたいいシーンだったと思いますよ。
井手口の縦横無尽ぶりと、押し込まれた時間帯。
チームとして最後まで戦えていた一方、個人としてこの日一番目立っていたのは、追加点を奪った井手口で間違いないです。ボールを奪いきれる球際の強さ、試合を決定づけたファインゴールと攻守両面に運動量を発揮して、ハリルホジッチ監督が求めるプレーを見せていましたね。
井手口の追加点が入るまで、日本は後半も守備に意識を置いていましたが、ゴール前まで押し込まれる時間帯がありました。具体的に言うとユーリッチやケーヒルを投入してきた辺りで、オーストラリアも同点に追いつくためにギアを上げてきました。
そこで日本は最終ラインを中心に身体を張って守り切ったんですが、ボールを奪った後にアバウトに蹴り出すプレーが少し目立った。もちろん状況によってセーフティーなプレーを選択するしかない時もあるけど、もしこれがW杯本大会だとしたら、セカンドボールを拾われて攻め込まれると苦しい展開になってしまう。そういう状況でも余裕を持ったプレーをできるようになるか。今後に向けての改善点でしょうね。