“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
“久保建英と交代する男”からエースへ!
イタリア戦、岩崎悠人が爆発する根拠。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byKenzaburo Matsuoka
posted2017/05/26 17:00
小川が負傷後のピッチ上では、いつにも増して死に物狂いでゴールを狙う岩崎の姿が見られたのだが……。
アシストだけでは評価されないのか!?
「スタメンで出るからには90分間試合に出たい。でも、代えられてしまうのは、僕が結果を出し切れていないということ、と受け止めています」
アシストだけでは、評価されない。
FWとして出場している以上はゴールという結果を求められるが、その結果を出し続けている小川に対し、岩崎は今年3月のドイツ遠征以降、ゴールから遠ざかっている――。
U-20日本代表における岩崎のプレースタイルは、自らがゴールをこじ開けるというスタイルというより、周りの選手にスペースを作り出す献身的なフリーランニングが特徴となっている。両サイドに流れたり、DFの裏に何度もスプリントすることで、小川や堂安律、三好が中に入ってプレーしやすい環境を生み出しているのだ。
その上で自身もチャンスとあればゴールを狙う……という献身的なプレーが、なかなか評価されづらいことも彼は分かっている。
「前線の動きを停滞させないことを考えると、僕が何度もスペースに抜け出して、(堂安)律や小川君が飛び込めるスペースを空けた方がチームのためになる。そうなると、どうしてもサイドに流れるプレーが多くなるのは自分でも分かっていました。流れた後にもっと何かできるように、自分のプレーの幅を広げないといけないのですが……。そこは常に考えています」
小川の怪我で、ピッチ上での役割を自ら修正した岩崎。
その工夫のひとつこそ、南アフリカ戦での小川へのアシストだった。
このプレーも左サイドに流れてボールを受けた後、フォローに来たDF舩木翔に横パスを入れて、一気に縦へスプリント。舩木のリターンパスを受けたときはゴールに身体が向いている状態で、シュートとクロスの両方が打てる状態だった。そして、小川に見事なアシストを決めた。
久保という最大のライバルに負けないため、90分間ピッチに立ち続けるために、周りを活かして、自らも活きるFWになるべくあらゆる工夫をしながらプレーを続けていた岩崎。しかし、小川のアクシデントで、彼の立場は大きく変わった。
久保とツートップを組んだ彼は、「誰が点を決めるのか……小川君がいなくなったからこそ、自分が攻撃を牽引していかないと」と、これまでの献身的なプレーから、自らが得点するためのフィニッシュワークに重点を置いたプレーにシフトさせる決断をその場で下したという。