野球場に散らばった余談としてBACK NUMBER
世代交代中の阪神を牽引する新主将。
福留孝介、若手を鼓舞する40歳の経験。
text by
酒井俊作(日刊スポーツ)Shunsaku Sakai(Nikkan Sports)
photograph byKyodo News
posted2017/03/30 07:00
春季キャンプの守備練習にて。若手の横田(左)、高山(中)らに声をかける福留。左胸の上には、キャプテンを表す「C」のマークが。
若手選手とベテランのスタッフとの橋渡しを。
「今日は若い選手も連れてきました。裏方さんは何十年もやっている。学べることが多くあるから」
福留だった。
キャプテンとして、練習をサポートしてくれる仲間と労をねぎらう食事会を開催したのだ。普段の感謝を伝えつつ、周りにいる若手に諭すように言う。フレッシュな顔ぶれがそろっていた。高山俊、北條史也、江越大賀……。タイガースの将来を背負う若手も誘い、杯を交わした。大いに盛り上がったという。
ある打撃投手はうれしそうに「若い選手にとって、打撃投手は年も離れているし、深く話す機会は、なかなかないですからね」と振り返った。
裏方との円滑な関係はチームにプラスになる。
チームスタッフもまた、かつては野球選手だった。
選手が壁に当たり、悩んだときは、コーチにとどまらず、いつも練習に付き添ってくれる打撃投手らに助言を求めるケースも多い。裏方は選手を映す「鏡」のようなもの。そして、縁の下の力持ちとして欠かせない仲間だ。
福留がお膳立てした食事会は選手とスタッフが慰労しあうだけでなく、ホープたちの自覚をうながす。日米通算19年目のリーダーは5年後、10年後を見ている。その頃も、きっとまだユニホームを着ている男たちへのメッセージだろう。チームの未来を思えばこそ、粋な行動なのだ。