野球場に散らばった余談としてBACK NUMBER
世代交代中の阪神を牽引する新主将。
福留孝介、若手を鼓舞する40歳の経験。
posted2017/03/30 07:00
text by
酒井俊作(日刊スポーツ)Shunsaku Sakai(Nikkan Sports)
photograph by
Kyodo News
サッカー日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が決断を下した。W杯アジア最終予選に、ACミランで出番がない本田圭佑を招集したのだ。不要論すら浮上するなかでも選んだ理由として「試合に出ていなくても、いまの代表は本田を必要としている。彼の存在が大事」との言葉が伝わってくる。いまの体制で最多の9得点を挙げる力量だけでなく、本田が発するリーダーシップへの期待がある。
それほど「精神的支柱」が大切なのだ。
スポーツは技量の寄せ集めでは勝てない。逆境に動じない心、そして、勝ちに向かって結束する姿勢は欠かせない。大舞台になるほど、猛者を束ねるリーダーの存在が浮き彫りになる。若い陣容のチームなら、なおさら大事になってくる。
さて、ずっと追っている阪神も、いままさに同じ状況だ。
「預かり」の立場ながらも積極的に貢献する。
金本知憲監督が率いて2年目を前に、チームの体制をガラリと変えた。
昨年11月にキャプテンが交代。不振を極めた鳥谷敬から、今年4月に40歳を迎える福留孝介にバトンタッチした。移籍5年目のベテランは、しかし、鳥谷の復調を待って再び禅譲する「預かり」のスタンスで引き受けている。それでも、就任したからにはチームが好転するよう、積極的に動く。わずか数カ月の間にも、キャプテンシーを発揮し、福留の心意気が見え隠れする。
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2月の沖縄・宜野座キャンプ序盤、休日前夜にチームスタッフが連れ立って出かけた。読谷村の焼き肉店で網を囲む。打撃投手が勢ぞろいするなか、輪の中心で口を開く男がいた。