相手指揮官も「野手顔負けで踏み込んできたね」。

　試合後、環太平洋大学の野村昭彦監督は言った。

「今回、佐々木くんの一番の良さは、最初の第1打席で先頭打者として打席に入ってフォアボールを選び、自らチームを引っ張っていく姿勢を見せたことだと思うんです。あれで自分のピッチングを乗せたし、仲間の野手にも勇気を与えたんじゃないでしょうか。それが私の中では（試合前に）一番嫌がっていたことでもありましたし“どれくらい打つのかな？”“どれくらい打ちに来るのかな？”と思っていたんですけど、（本塁打も）野手顔負けでしっかり踏み込んできましたよね。岩永も滅多にフォアボールとか出すピッチャーじゃないんですけどね。結局、あれが大きかったと思います」

　元々、バッティングが好きな方だ。自主練習時には暇を見つけて嬉しそうにバットを振る。大会前の彼に話を訊きに行ったときもそうだった。

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「バッティング……いやぁ無理っす。ボールが全然見えないです」

　と、そのときは軽くおどけて見せたが、だからと言って攻撃面を仲間に全て託すという考えはなく、今の自分が出来る中で最大限の努力をしようと試合に臨んでいた。

ランナーで出ても「いつでも走ってやる」の気持ちを。

　ピッチングでも、プレイボールから試合終了まで全く手を緩める様子はなかった。

「（ノーヒットを意識したのは）3回くらいです。いつも序盤で打たれているので、凄く試合が長く感じました。でも（投げる方も打つ方も）両方やるってことで」

　両方やる。それは打撃だけでなく、走者として塁上にいるときも変わらない。

「いつでも走るぞ、いつでも走ってやるぞ」

　スタンドまでそんな声が聞こえてきそうなほど、彼は出塁すれば塁上から相手投手を揺さぶっていた。そして8回でマウンドを降りてからもベンチでは中央付近に座って人一倍、仲間に声援を送った。

「今日も含めた残り3試合、今の仲間と出来ることを噛みしめながら後の試合を戦いたい」

　その想いが8回1死までの無安打投球だけでなく、第1打席での四球、第3打席での右前安打、第4打席での本塁打を生んだ。

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