球道雑記BACK NUMBER
佐々木千隼に桑田真澄イズムあり。
大学最後の大会での快投、本塁打。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/11/24 17:00
ロッテにドラフト1位指名された佐々木。パ・リーグも指名打者制だが、交流戦で打席に立つケースがあれば全力を尽くすはずだ。
「お前ごときのピッチャーが」と叱責された1年前。
そんな佐々木が「全員野球」を強く意識するようになった出来事がある。
2015年10月17日の東海大学戦のことだ。
相手左腕の中川皓太(現・読売ジャイアンツ)との投げ合いは、序盤から両投手が快調に飛ばして息詰まる投手戦の様相を呈していた。
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しかし5回表、東海大学の5番・竹内司に佐々木が本塁打を打たれたところから試合は一変。結局この回だけで5失点を喫した。試合後に津野監督は佐々木を呼び出し、かなり強い口調で叱りつけた。
「バントを決められたら、ファーストに投げることすらも『ああ……』ってなってしまったりしていたんですよね。でもそうなっているのはお前だけで、他の野手は必死に守ろうとしているんだぞ、必死に点を取ろうともしているし、そこで引きずって投げていたんじゃダメだって伝えました。『お前ごときのピッチャーが』と、かなりきつい言葉も並べましたね」
「このままじゃダメなんだぞ、と痛感しました」
佐々木もこれは相当に堪えたという。
「ボロボロにやられて、なんていうんですかね……納得いかないというか、マウンドでイライラしてしまう態度を表に出してしまったんです。それで、学校に帰って来てから監督さんに呼ばれて『お前、このままじゃダメだぞ』と言われた。自分自身もその試合は相当に悔しかったので、本当にこのままじゃダメなんだなとそのときに痛感しましたし、そこから野球観が変わったのはあります」
ちなみに、津野監督が声を荒げることは滅多にないという。選手の側で寄り添い、意見を吸い上げ、それを練習法にも取り入れるとても柔軟性に優れた監督だと佐々木は話す。
「野球に関しては全く言われたことないです。言ってくれるのは人として大切なことだけで」(佐々木)
だからこそ、このときの監督の言葉が心に響いた。