球道雑記BACK NUMBER
佐々木千隼に桑田真澄イズムあり。
大学最後の大会での快投、本塁打。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/11/24 17:00
ロッテにドラフト1位指名された佐々木。パ・リーグも指名打者制だが、交流戦で打席に立つケースがあれば全力を尽くすはずだ。
使わない筋肉にダメージが残ってしまったが……。
「中1日の先発は横浜市長杯の準決勝でもあったのですが、そのときと今回の違いが何かといえば、ピッチャーが打席に入るというのが一つあったと思うんです。リーグ戦と横浜市長杯では指名打者制が採用されていましたが、神宮大会では指名打者がなくなって、佐々木も打席に入った。しかもしっかりバットを振って、ホームランまで打ってですから、いつもは使わない筋肉にダメージが残ってしまったんです。今回に関して言えば右前腕の張りが、いつもとは違っていた。
もちろん普段から打撃練習をしている選手であれば解消される問題ではありましたが、今回はそうじゃなかった。この状態でどこまでやれるのかなと、試合前に心配もしていたのですが、彼は気持ちで試合に向かっていくタイプだから、本人に余計なことは伝えていません。ただ、我慢してあそこまで投げていたので、あれが限界だったんじゃないかと思います」
潮田が言っていることは、佐々木がバッティングしたから疲労がとれなかったという単純なことではない。佐々木はチームの勝利のためにバットを振り、その結果、疲労の回復が遅れた。それだけだ。人間の体はそこまで計算できるほど単純なものではないし、同じようなケースを迎えたとしても今度は全く問題なく、別の結果になったということは十分考えられる。だからこそ、難しい。
「やっぱり主戦で投げさせてもらっているんで」
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それでも佐々木は試合後にそうした言い訳を一切しなかった。
それはエースのプライドだろうか。
神宮大会が始まる前に佐々木はこんなことも話していた。
「やっぱり主戦で投げさせてもらっているんで、そういうピッチャーはチームの柱と言われるわけですから、その柱が崩れたらいけないわけですし、そういう態度を見せないようにだとか、意識してやろうと思っています」
試合後、佐々木はすれ違うチームメイトや、同じ学生でありながら裏方に回った学生コーチと抱擁を交わしながら、「ごめんな」と謝り続けた。その度に声をあげて人目も憚らず号泣していた。
津野監督は、そんな教え子について決勝戦の試合後にこう言った。
「勝敗よりも素晴らしいこの子達と出会えて本当に良かった」