錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
同世代ラオニッチ、チリッチが躍進。
“安定した錦織”から脱皮すべき時。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2016/11/24 11:45
世界ベスト8だけが出場できるファイナルズに3年連続で出場した錦織。これ以上の活躍は世界王者レベルということになるが……。
昨季より良い成績の今季なのに、満足の言葉が無い!?
「2年連続でベスト8で終われることは価値のあることだと思っている」
これは去年のファイナルズ終了後の錦織の言葉だが、そういう満足の言葉は今年の錦織の口から語られなかった。
昨年の8位よりも上の5位で今シーズンを終えたが、大会の序盤には、「なるべく3位か4位で終わりたい。何ポイント取れば4位になれるのかわからないですけど、(4位の)ワウリンカが近くなってきているのは感じている」と言っていたのだから、5位で満足したら嘘になる。
今年の錦織の一番の評価ポイントは安定した好成績でトップを維持してきたことだが、〈安定〉というものはそれのみでは人々の記憶に残りにくいのが現実だ。
海外では、純粋に強い選手としてシビアに評価される。
特に錦織は、18歳でのツアー優勝という鮮烈なデビューをはじめ、キャリアの初期に数々のインパクトを残した分、再び人々を驚かせたり感動させたりするのは大変なのだ。
日本のファンはどんなときでも錦織圭が好きだし、日本のメディアだってそうだが、海外のファンやメディアは「日本人なのにこんなにがんばっている」という目では見ないし、「日本でテニスをこんなにメジャーにしてくれた」などという感謝の気持ちもない。
彼らは、マレーやジョコビッチやワウリンカといった今のトップ5を争う他の選手たちと横並びに、錦織をよりシビアでフェアな目で見ている。だから、厳しいようだが、もしも〈期待はずれ〉が続けばその関心は薄れてしまうだろう。
来月には27歳になる。しかしひと昔前に比べてトップ層の年齢が上がっており、30代からがピークという選手も珍しくはない。
「自分で言うのもなんですけど、これから4位、3位といく力はあると思っている。今回、新しく(ドミニク・)ティームが入って、次(ダビド・)ゴファンも来るでしょうし、これから来年、再来年とどんどん変わっていくと思うので、なるべく上のほうにいられるようにしたいです」
錦織が言う通り、ツアーはこれから大きな変化を迎えるはずだ。