ブックソムリエ ~新刊ワンショット時評~BACK NUMBER
「愛」をもってテニスを語れ。
~0点をラブと呼ぶ理由、知ってる?~
text by
幅允孝Yoshitaka Haba
photograph byGetty Images/Wataru Sato
posted2016/11/20 17:00
『ラブ・ゲーム テニスの歴史』エリザベス・ウィルソン著 野中邦子訳 白水社 3800円+税
テニスのスコアでは0を「ラブ」というのはなぜか? 誰もが一度は疑問に思いながら、「まあ、そういうものだろう」とやり過ごしてきたこのスポーツの来歴が本書でやっと腑に落ちる。
他にはない奇妙なスコア方式「ラブ=0」は、テニスに熱心だった修道士たちが使用していた時計の読み方と関係するという説から、試合前に賭け金を募った時の掛け声「愛か金か(ラブ・オア・マネー)」説まで様々なようだ。諸説のどれを支持するかは、この本を読んで考えて欲しいのだが、白黒はっきりつけることが目的の近代スポーツの中で、不思議とテニスにだけは謎めいた余白がまだある点に興味をひかれる。