詳説日本野球研究BACK NUMBER
球史に残る偉業が生まれつつある……。
“二刀流”大谷翔平の圧倒的な数字。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNanae Suzuki
posted2016/09/29 16:45
投打に常識外れの活躍を見せる大谷翔平。球史において、間違いなく破格の存在、すでにして生きる伝説と化したか。
勝ち試合では必ず大谷の打撃が寄与している。
大谷の各種記録を調べて驚かされるのは重要な試合での勝負強さである。9月29日現在、勝ち試合と負け試合の打撃成績をくらべてみよう。
◇勝ち試合……200打数75安打54打点16本塁打、打率.375
◇負け試合……110打数26安打10打点5本塁打、打率.236
◇引き分け……8打数1安打2打点1本塁打、打率.125
勝ち試合での好成績をみればチーム内での打者・大谷がいかに大きな存在になっているかわかる。昨年まではボールゾーンに落ちる変化球を追いかけて凡打、空振りに倒れる場面が多かったが、今年はキャッチャー寄りでしっかりボールを捉えられるようになり、ミスショットが少なくなった。差し込まれても逆方向に持っていける自信がついたことが、そういう懐の深いバッティングを可能にしたのだろう。
首位を争うソフトバンク戦での好成績も見逃せない。
19試合に出場してヒットが出なかったのは7月30日の1試合だけで、あとの18試合はすべてヒットを放っている。
ソフトバンク戦では、投打に突出した成績を誇る。
ソフトバンク戦では複数(マルチ)安打が9試合もあり、このうち3安打以上の猛打賞が3回もある。
対戦成績は次の通りである。
◇ソフトバンク戦の打撃成績……打率.411(安打30)、本塁打9、打点16
首位ソフトバンクまで6ゲーム差に迫った8月6日の試合では千賀滉大、嘉弥真新也からそれぞれホームランを放っている。1本目は千賀の外角高めの148キロストレートをヤフオクドームのレフトホームランテラスへ、2本目は左腕嘉弥真の138キロストレートを捉えてセンター方向へ推定130メートルの大アーチとなった。
大谷はピッチングでもソフトバンクを圧倒している。
4試合に先発して2勝0敗、防御率1.26という迫力で、奪三振率10.05、与四球率3.5と投球内容も安定している。そこそこのコントロールでありながら死球が4と多いのは、いかに大谷がソフトバンク各打者の内角を攻めているかを表していると見る。
ストレートがプロ野球最速の164キロを計測したためストレートにばかりスポットライトが当たるが、今季は最初からエンジンを全開にせず、ここぞというときのために160キロ超えの豪速球を温存する投球術にも光るものがあるのだ。
交流戦の巨人戦ではフォークボールから入ってスライダー、ストレート、あるいは158キロのストレートで入り、2、3球目にカーブを続けるということがあった。この試合では1、2回にストレートが150キロを超えたのは1球しかなく、フォークボールをスライダーのような感覚で使う配球が目を引いた。それが3回からストレート主体のピッチングに変わり、結果的に150キロ超えが40球、160キロ超えが5球という力のピッチングを展開、2失点完投で巨人を封じ込めた。