プロ野球PRESSBACK NUMBER
実にファイターズらしい優勝の形。
2つの「信じられない」で大逆転。
posted2016/09/29 16:30
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Takuya Sugiyama
お立ち台で11.5ゲーム差をつけられたときの心境を尋ねられた栗山英樹監督は、清々しい表情でこう答えた。
「ずっと言ってきたように、あきらめていませんでした」
そう、あきらめないのがファイターズの真骨頂。
正直に告白すると、ぼくはほとんどあきらめていた。
6月下旬から7月半ばにかけて、球団記録を更新する15連勝を樹立しても、まだ信じていなかった。なぜなら、この2年間でホークスの強さが骨身に沁みていたからだ。
昨シーズン、ファイターズは2位でリーグを終えた。2位独走。優勝したホークスに、12ゲームという途方もない差をつけられた。
昨年末、本サイトの「プロ野球・ゆく年くる年」のファイターズ編で、ぼくは次のように書いた。
《ホークス戦を観るのは、洗面器に張った水にずっと顔をつけているような体験だった。ずっと息苦しいのだ。柳田、内川、李大浩、松田、中村……。(中略)野球は確率のスポーツ。これが三巡、四巡すれば、やがてどこかで打ち出すことになる。》
この文面から伝わってくるのは、2位で上出来、優勝はホークスで決まり、というあきらめにも似た心境だ。
叫ばずにはいられなかった「シンジラレナ~イ!!」。
ところが今季のファイターズは独走する王者を捕まえ、最後に逆転した。こうなると、かつての名将の言葉を叫ばずにはいられない。
シンジラレナ~イ!!!!!!!
もしかすると、この言葉に大逆転の秘密が隠されているような気がする。
北海道移転後のファイターズは、球界の常識に捉われない大胆な補強、用兵を次から次へと繰り出してきた。この球団には、自由な発想で可能性をひたむきに追求する風土がある。