月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
プチ鹿島、10月のスポーツ新聞世相。
巨人監督人事をめぐる「空白の一日」。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/11/04 16:15
秋季練習に合流した高橋由伸監督(中央)。江川氏有力説も飛び交ったが、高橋氏が現役を引退し監督に就任することが決まった。
平沢大河に漂うスターの予感。
ドラフトについては、若者の未来をくじ引きで決めていいのかともよく言われる。完全ウエーバー制にしたほうがいいという意見が昔からある。まったくの正論だ。
しかし、くじ引きというシステムがあるからファンは「あの球団は誰を指名するのか」「どういう戦略でくるのか」とワクワクする。いっそう思いが深まる。
選手にしても、これから大観衆の前でプレーをしてプロで稼ごうと決めたなら、くじ引きという不条理さえも「自分のドラマ」に変換しなければいけないと思うのだ。平沢大河選手は気持ちをすぐに切り替え、ロッテ入団に前向きな発言をしてみせた。スターの予感がプンプンする。
楽天は代わりにオコエ瑠偉(関東一)を指名。一般世間がもっとも注目していた選手である。さすが世論の空気を読む「政治家・星野仙一」がフロントにいるだけある。唸った。
「未来」の日に発覚した野球賭博。
10月は暗いニュースもあった。「巨人現役投手・福田 野球賭博」(サンスポ・10月6日)である。21日にはさらに巨人の笠原将生、松本竜也投手の関与も発表された。実はこの日は映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」で描かれた「未来」の日だった。
映画では 2015年10月21日にタイムスリップした主人公のマーティはシカゴ・カブスのワールドシリーズ進出を知り、過去に戻って賭ける誘惑につられるが結局やらなかった。
しかし“現実の”2015年10月21日には野球選手が野球賭博をしていたことが発表されたのである。最悪だ。自覚の無さに驚く。巨人を始めとする球界の再教育を厳命したい。
最後は明るい話を。やっぱりグラウンドでの野球である。日本シリーズはソフトバンクとヤクルトのあいだで争われた。ソフトバンク打線が「つながり放題」で圧勝。鷹軍団は日本シリーズ連覇、工藤監督は就任1年目で日本一。おめでとうございます。
第3戦では伝説が生まれた。ヤクルト・山田哲人が3打席連続ホームラン! 「ああ、ホーナーが帰ってきた」と思ったのは確実に昭和おじさんだが、新世代スーパースターを日本中にあらためて知らしめた。