スポーツ百珍BACK NUMBER
バラバラになる寸前だった星稜が、
悲願の日本一を掴んだ要因とは?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAFLO
posted2015/01/13 11:35
現在アジアカップを戦っているサッカー日本代表の本田圭佑も、「今日は俺の試合よりそっちを聞いて下さいよ」と母校の初優勝を喜んでいた。
逆転されてから、星稜が見せた粘り。
しかし、そこでもうひと踏ん張りを見せたのは星稜だった。
昨年の決勝戦で富山第一に逆転負けした星稜だったが、その経験を生かした。
「失点してしまったことは取り戻せないですが、時間はまだあったので焦りはなかったです」とボランチを務めた平田健人が言う。実際、2失点目の9分後の64分、背番号10を背負う大田賢生が右サイドで切り返しから左足で正確なクロスを上げると、攻撃参加した右サイドバックの原田亘がヘディングで合わせて同点に追いついている。
再び同点になって以降は両校の一進一退の攻防が続く。後半終了間際には大田の強烈なミドルをGK吉田が弾いてバーを直撃するなど、ゴール前での際どいシーンがあったが2-2のままタイムアップ。決着は延長戦へともつれ込んだ。
延長戦で2得点を挙げたのは、ここまで無得点の森山だった。
そしてこの局面で試合を決めたのは、今大会ここまで無得点だったFW森山泰希(たいき)だった。95分にスローインのこぼれ球に鋭く反応する。
「練習試合でもニアに蹴ったら入る確率が高かったんで、思い切って蹴ろうと思いました」
その言葉通り、相手マーカーをうまくターンでかわすやいなや左足を振り抜き、ニアサイドを破った。
そして極めつけは終了直前の110分だった。残り数分の時点でコーナー際でのボールキープを選択した星稜イレブンだったが、右45度でフリーとなった森山がパスを受けると、迷いなく強烈なミドルシュートを蹴りこんだ。この2得点によって、昨年は逃した日本一の座を星稜が掴み取った。
「失点した後に『ここで終わったら去年と同じになるぞ、あきらめなければチャンスは来るぞ』と言っていました」と森山も気持ちを切らさなかったことに触れた。月並みな表現だが、結束の強さが星稜の逆転勝利の要因となったことは想像に難くない。