スポーツ百珍BACK NUMBER
バラバラになる寸前だった星稜が、
悲願の日本一を掴んだ要因とは?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAFLO
posted2015/01/13 11:35
現在アジアカップを戦っているサッカー日本代表の本田圭佑も、「今日は俺の試合よりそっちを聞いて下さいよ」と母校の初優勝を喜んでいた。
「チームがバラバラになりそうなことも……」
ただそれと同時に、選手権という枠組みの中でチームの結束を保つ難しさを感じさせる話もあった。
主将の鈴木大誠に印象的だった出来事を聞くと、この代の星稜は非常に“トガった”チームだったのではないか、と感じるエピソードがあった。
「日本一に向けて熱く取り組んでいた(河崎護)監督の意見に反抗する選手が出る時期があったり、チームのためのプレーができていなく、県大会準決勝の試合前に監督がチーム全員に対して30分くらい激怒したこともありました」
副将を務めた平田も「個が強いチームだったんですけど、強すぎるところもあって、バラバラになりそうな時もありました」と言う。そして、その個性の強さが選手権の期間でも頭をもたげそうになったという。
「仲間のために」という言葉の本当の意味。
平田は続ける。
「本当にバラバラになったわけではないですけど、2回戦の前に、メンバーに入れていない3年生の気持ちが“切れている”状況に自分たちが気づけていなくて、(部員内で)少し食い違いがあったんです。だからまず、主将と僕ら副キャプテンで話し合って、翌日に部員全員でミーティングに取り組みました。そういう(メンバー外の)心に気づけていなくて、全然甘かったなと思います」
星稜サッカー部は100人を超える大所帯である。年間を通して戦うリーグ戦なら、Aチーム、Bチーム……とカテゴリ分けすれば試合経験を積むことができる。しかし選手権ではメンバーに登録されなければ、それは完全に実戦機会を失うことを意味する。ピッチに立つ選手は、応援席で声をからしながらも、無念さを抱える登録外の選手らの気持ちを慮って、結果を残さなければならないという側面もある。
この大会の取材をしていると選手から「仲間のために」という言葉がよく聞かれるが、それは日々しのぎをけずり合ったチームメートに向けての責任感からも発せられるものなのだろう。