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バラバラになる寸前だった星稜が、
悲願の日本一を掴んだ要因とは?
posted2015/01/13 11:35
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
AFLO
高校サッカー選手権のファイナルにはずれなし。
トーナメント大会の決勝戦というと、お互いの負けたくない気持ちが強くなりすぎるあまり膠着した展開になることが往々にしてある。
しかし、近年の高校選手権は非常に劇的な展開ばかりで、しかもビューティフルゴールが多い。「セクシーフットボール」で名を馳せた野洲(滋賀)が乾貴士らをはじめとした個人技と連動性を駆使して決勝点を奪った第84回大会、そして2点ビハインドを背負いながらも後半終了間際に追いつき、延長後半での村井和樹の鮮やかなハーフボレーで富山第一が初優勝を手にした前回大会は記憶に新しいところだろう。
その伝統は、決戦の舞台が国立競技場から埼玉スタジアム2002に場所を移した前橋育英(群馬)と星稜(石川)との一戦でも受け継がれていた。
試合は後半、一気に前橋育英の流れに。
Jリーグの試合でも笛を吹く岡部拓人主審が球際で闘わせるジャッジングをしたこともあり、序盤から激しいぶつかり合いとなった。試合が一気に動いたのは後半だった。
前半11分に星稜がPKで先制したものの、連動性ある攻撃で前橋育英が徐々に攻勢を強めていく展開となる。その中で53分、大会を通じて正確なパントキックで攻撃の起点となっていたGK吉田舜のロングパスから野口竜彦のゴールで試合を振り出しに戻すと、その2分後には世代別日本代表にも名を連ねる渡邊凌磨が左サイドからペナルティエリアに切り込み、絶妙のインフロントキックでゴールネット右隅を揺らす一撃を叩きこんだ。
鮮やかな一撃、そして畳み掛けるような前橋育英の逆転劇。4万6316人が詰めかけた埼玉スタジアムは日本代表戦やJリーグでの浦和レッズの試合に勝るとも劣らない歓声が渦巻き、完全に前橋育英の流れになっていた。