プロ野球亭日乗BACK NUMBER
今年のセMVP争いは、3位が激戦!
巨人・鈴木尚広の“貢献度”を考える。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/09/19 10:40
通算206盗塁で、失敗が45回、成功率82%以上の鈴木尚広。通算200盗塁以上の選手では、広瀬叔功の82.9%につぐ史上2番目の記録だ。
代走に出て、警戒をかいくぐっての105盗塁。
今年の4月29日のヤクルト戦でプロ通算200盗塁を達成。プロ野球72人目で巨人史上では5人目のこの記録の何が凄いかと言えば、200盗塁のうち半分以上の105個が代走で記録したものだということなのだ。プロ通算18年目で規定打席到達は1度もないまま、というのも、史上初めての“快挙”だった。
鈴木を「他に代役の利かない選手」と語る巨人・原辰徳監督は、こう語っている。
「代走で盗塁を決めるということは、皆さんが想像している以上にタフなこと。相手バッテリーも含めた誰もが走ると思って、いつも以上に警戒している中で、そのミッションを成し遂げる。想像以上のプレッシャーに耐える力と、そのための準備がなければ、ああいう記録は作れない」
タイミングがアウトでも、タッチを避ける技術。
特に今年、注目を集めたのは、鈴木の足で勝った試合が目立ったからだった。
たとえば、7月15日のヤクルト戦の延長12回2死二塁から橋本到の右前安打で生還した走塁がそうだった。もちろんヤクルト外野陣は前進守備。一塁の武内晋一のグラブを弾いた打球を右翼手の雄平が素早く拾って本塁に送球し、タイミングはアウトだった。
しかし鈴木は捕手の中村悠平のタッチの角度を計算して、首と身体をひねって左手だけでベースを払うスライディングでサヨナラをもぎ取った。
「神の手スライディング」として、翌日の新聞でも絶賛されたプレーだった。
8月14日の阪神戦も、鈴木の技術が力となった白星だった。
8回1死二、三塁で打者は高橋由伸、カウント3ボール1ストライクという場面だった。ここで阪神の筒井和也の5球目がショートバウンド。捕手の鶴岡一成が右後方に弾くと、すかさず三塁走者の鈴木が本塁に突入した。
鶴岡もそれほど大きくボールを弾いたわけではなかった。タイミング的にはかなり微妙なところだったが、カバーに入った筒井のタッチを避けながら、これも左手でホームベースをさらってセーフとなっている。