プロ野球亭日乗BACK NUMBER
今年のセMVP争いは、3位が激戦!
巨人・鈴木尚広の“貢献度”を考える。
posted2014/09/19 10:40
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
NIKKAN SPORTS
新聞記者をやっていた頃に、MVPの投票で1年間、資格を失効したことがある。
理由は選手の名前の文字を間違えたためだった。確か佐々岡真司の「真」の文字を「慎」と書いたように記憶するが、我ながら恥ずかしいケアレスミスではある。
ただ、“逆切れ”して言わせてもらえば、佐々岡慎司と書いたとしても、所属チームも広島と書いていたのだし、誰に投票しているかは明確に分かるはずで、それぐらいの忖度をしてくれてもいいのではないか。それで投票権を1年間失効させるのなら、もっと権利のないような記者もいるのではないだろうか……。
実は毎年毎年、地元の選手にしか投票をしないとか、本当に信じられない票を投じる記者はいるのである。
これはMVPの投票ではなかったが、ゴールデングラブの投票で、当時、肩の故障でほとんど送球の出来なかった阪神・金本知憲外野手に1票を入れた記者がいたのには、本当に呆れて言葉も出なかった。
もちろん票を投じる記者も、誰に投票をしようが自分の1票には自信を持っているはずである。本当はこうした記者投票も、誰が誰に票を投じたのかを透明化して、それぞれの記者が問われれば投票理由を明確にすべきなのではないかと思うのである。
“陰のMVP”と言われる巨人の鈴木尚広。
さて、前置きが長くなったが、巨人の鈴木尚広外野手のことを書こうと思っている。
ここのところ新聞やテレビで取り上げられる機会が多くなっているので、お気づきの方も多いかもしれないが、優勝へ、カウントダウンの始まった今年の巨人で“陰のMVP”と言える活躍を見せたのがこの選手だった。
足のスペシャリストとして、今季の先発出場は1試合のみ。ただ、終盤の勝負どころで、ここ一番の代走として起用されてみせる、磨き抜かれた走塁術とスライディング術は、他球団の選手も認める球界ナンバー1のテクニックである。