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アトレティコがチェルシーを破り決勝へ。
モウ1年目、間に合わなかった「教育」。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2014/05/01 12:15
「何が僕たちに欠けていたのかは分からない。今日は難しい試合だった。来年のためにも、この試合から僕たちは学ばないといけない」とアザールは試合後にコメントしている。
若手の多いチームを率いたモウリーニョの「教育」。
チェルシー2年目のアザールは、今季からのモウリーニョ体制下で、指揮官がプレーメイカー陣にも要求する「ボールを持たない時の貢献度」も格段に高まっていた選手だ。しかし、自身にとっては過去最大のビッグゲームで23歳の若さが出てしまったのかもしれない。
1stレグは負傷欠場で戦力になれず、加えて同じ2列目レギュラーのオスカルが故障明けでベンチ留まりだったことから、カウンターの担い手としての責任を意識する余り守備の意識が薄れてしまったのかもしれない。1失点目の直後には両膝に手を当てて俯き、3失点目の直後には「何故また逃がした!?」とテリーに言われていたアザールにとっては、絶対に忘れる事のない教訓になるだろう。
6年ぶりに復帰したチェルシーで、アザールをはじめ主力に若手の多いチームを預かったモウリーニョは、「教育は前倒しで進んでいる」と今年に入り発言していた。しかし、CL決勝進出を果たすにはチームの成長度が足りなかった。
ピークにあるアトレティコ、発展途上のチェルシー。
これに対し、シメオネ体制3年目のアトレティコは、32歳のチアゴが「チームの精神面を変えた監督の影響が大きい」というように決勝進出に相応しい勝者だった。集団としての力はピークにあると言っても良い。監督のシメオネもエースのジエゴも今夏の引き抜きが噂され、守護神のクルトワは3年間のレンタルを終えて来季はチェルシーのゴールを守る可能性が高いのだ。
そのチェルシーは発展途上の集団だ。就任1年目の指揮官は、やはり今季途中に「来季は開幕当初から優勝候補と言われる存在になっている」とも豪語している。計180分間の戦いを終え、シメオネの「現アトレティコ」はCL決勝の地ポルトガルという終着点、モウリーニョの「新チェルシー」はまだ終わりが見えない未来を目指して進む。