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アトレティコがチェルシーを破り決勝へ。
モウ1年目、間に合わなかった「教育」。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2014/05/01 12:15
「何が僕たちに欠けていたのかは分からない。今日は難しい試合だった。来年のためにも、この試合から僕たちは学ばないといけない」とアザールは試合後にコメントしている。
「この手の試合ではディテールが勝敗を分ける」
但し、敗軍の将は「60分間は我がチームが優勢だった」と付け加えることも忘れなかった。たしかに、チェルシーは53分のFKで勝ち越しに迫っていた。GKティボウ・クルトワの反射神経に阻まれなければ、ジョン・テリーがヘディングでネットを揺らしていた。だが、アトレティコは後半開始から52分までの間に2度、トゥランとチアゴ・メンデスのシュートで逆転に近付いていた。
チェルシー指揮官の発言に賛成するとすれば、それは「この手の試合ではディテールが勝敗を分ける」というコメントになる。モウリーニョが言わんとした「僅かの違い」とは、クルトワのファインセーブと数分後のPK。だが、第一の分岐点は後半を待たずに訪れていた。44分にアトレティコの同点ゴールを招いた「僅かな心の隙」だ。
ハーフタイムを目前に集中力が落ちてしまったのか、エデン・アザールはクロスの落下地点に向かうフアンフランを完全に逃がしていた。チアゴがファーポスト目掛けてクロスを放った時点で、ゴール前のジエゴをマークしていたテリーは、左SBの位置に下がっていたアザールに対し、指を指してフアンフランのマークを命じていた。しかし、アザールによる注視は、一瞬、後ろを振り向いただけで終了。背後からボックス内に走り込まれ、アドリアンへと折り返された。
2点目、3点目にも絡んでいたチームのミス。
後半の2失点にも細かなミスが絡んでいる。PKを招いたサミュエル・エトーのファウルは、いわゆる「FWの下手なタックル」と考えれば仕方はない。倒されたジエゴには、ファウルを誘う良い意味でのずる賢さも見て取れた。だが、スタンディング・ジャンプからクリアを試みたダビド・ルイスが、ヘディングでしっかり距離をかせげていれば、エトーがジエゴと競る場面には至らなかったはずだ。
そして、完全に望みを絶たれた3失点目に至る過程では、再びアザールがフアンフランを逃がしていた。逆サイドでの相手ボールが続く間に、背後のランナーへの意識が疎かになってしまったようだ。慌てて並走を試みたがプレッシャーをかけることはできず、チアゴからのクロスをダイレクトで折り返された。1失点目のリプレイのようだった。
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