フランス・フットボール通信BACK NUMBER
元ロシア代表の“レジェンド”が激白。
「ロシアサッカーはカオスだ!」
posted2018/06/26 07:00
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph by
Pierre Lahalle
昨年、FIFAコンフェデレーションズカップを取材した際に、ロシア代表の目を覆わんばかりの酷さにかなり驚いた。南アフリカに続き、開催国のグループリーグ敗退も大いにあり得る。そう思ったのは私(田村)ばかりではないだろう。
だがロシアは、大会が始まるやサウジアラビアとエジプトを相手に2連勝を成し遂げ、どこよりも早くグループリーグ突破を達成した。驚きは、昨年のコンフェデレーションズカップの時からは想像もできないレベルのサッカーを、ロシアが実践していることだった。1年の間に何が起こったかはわからない。ただそれは、ロシアサッカーにとって肯定的な何かであるのは間違いない。
『フランス・フットボール』誌6月5日発売号では、懸念を拭い去る前のロシアサッカーを取り上げている。語るのは元ロシア(旧ソ連)代表のアンドレイ・カンチェルスキス。直近にイギリスで出版された伝記から、フィリップ・オクレール記者が要点を抜粋している。
カンチェルスキスが指摘するロシアサッカーの構造的な諸問題を、ワールドカップの好パフォーマンスと結果がポジティブな影響を与えて変えることができるのか。カンチェルスキス自身は、大会本番前までのロシア代表の活躍をどう見ていたのか……。
そうした状況を踏まえて、読者の皆さんもこのレポートを読んで欲しい。
監修:田村修一
ロシアのレジェンド選手が危惧する現状。
かつてマンチェスター・ユナイテッドで活躍したアンドレイ・カンチェルスキスは、自国のサッカーの現状に厳しい目を向けている。彼によればワールドカップが世界サッカーの流れにおいて何かを変えることにはならないという。
現役時代(1988~2006)はストライカーとしてイングランド(マンチェスター・ユナイテッド、エバートンほか)、イタリア(フィオレンティーナ)を含む6つの国でプレーし、引退後は監督(2007~16)としても活躍したカンチェルスキスは、49歳になる今も世界のサッカーを詳細に分析している。祖先はリトアニアで自身はウクライナ生まれの彼が、ソビエト崩壊後に選んだ国籍はロシアだった。
マンチェスターダービーにおいて最後のハットトリック('94年11月)を記録したカンチェルスキスは、イギリスでこのほど伝記(“Russian Winters:The Story of Andrei Kanchelskis”)を出版した。その中で彼は、ワールドカップ開催国であるロシアが抱える諸問題を詳しく語っている。
ここから先の文章では……カンチェルスキスのひとり語りの要素を読んでいただく。