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マラドーナ、リケルメが愛した「世界一危険なスタジアム」ボンボネーラ生観戦で見た“熱狂と怪しさ”「アミーゴ…俺に任せれば問題ない、安心しろ」
posted2023/07/07 17:01
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Atsushi Iio
U-20W杯でアルゼンチンに滞在中、“ソリさん”こと反町康治技術委員長が興奮冷めやらぬ様子で語り出した。
「とにかく熱気が凄くてさ、スタンドが揺れるんだよ、大袈裟じゃなくて本当に」
ソリさんが熱弁するのは、ボンボネーラでのボカ・ジュニオルスのゲームのことである。
若き日本代表が出場するU-20W杯開幕直前の5月14日、ベルグラーノ戦に足を運んだという。
ボカのホームゲームのチケットはソシオ(クラブ会員)にしか販売されない。当日券はもちろん、前売り券も一般発売されることがないから、入手が極めて難しいことで知られる。
「俺なんて3万円出してもいいと思ったもん」
そこで、ソリさんはとっておきのコネを使った。
全日空サッカークラブ(のちの横浜フリューゲルス)時代のチームメイトで、のちにアビスパ福岡の指揮を執り、ボカのコーチも務めたネストール・オマール・ピッコリにチケットを用意してもらったのだ。
「みんなに自慢しようと思っていたら、結局、冨樫(剛一監督)たちもアルゼンチン協会にチケットを手配してもらって見に行ったんだ。しかも、俺よりもいい席で見てるんだよ、参っちゃうよな(苦笑)」
実は、僕もボカの試合を見にいくつもりなんですよ――。
そう言うと、ソリさんは「いつの試合?」と身を乗り出してきた。
「いくらで買えたの? それは悪くない値段だね。俺なんて3万円出してもいいと思ったもん」
U-20W杯開催地がアルゼンチンになったので…
もともと今回のU-20W杯を取材するつもりはなかった。
もちろん興味はあったが、Jリーグに足を運び、A代表も取材して、U-22日本代表もカバーすると、もう一つ下のカテゴリーまで手を伸ばす余裕がない。だから、映像でのチェックにとどめようと思っていた。
それなのに、なぜ現地に行くことにしたのか?
理由は、アルゼンチンだったから――。
当初、この大会はインドネシアで開催される予定だった。ところが、イスラム教徒が多数を占める同国で、国交のないイスラエルの参加に反発が広がると、その情勢を問題視したFIFA(国際サッカー連盟)に開催権を剥奪されてしまう。
そこで名乗りをあげたのが、アルゼンチンだった。
予選で敗退していたため、開催国枠での出場を狙った……かどうかは定かではないが、何はともあれ開幕1カ月前というタイミングで、現世界チャンピオンの国での代替開催が決まった。
その知らせを受けて、僕はがぜん行く気になった。