プレミアリーグの時間BACK NUMBER
「個の力が勝敗を分けた」シーズン。
プレミア'12-'13ベスト11、堂々発表!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2013/06/04 10:31
第34節チェルシー戦で65分に相手DFイバノビッチに噛み付いた後、終了間際に劇的同点ゴールを決めたスアレス。
スウォンジーの支柱となったウィリアムズの高い貢献度。
4バックの中央は、ヤン・ベルトンゲンとアシュリー・ウィリアムズの2名。
トッテナムの前者は、繋ぐサッカーを志向するアンドレ・ビラスボアス体制1年目が「上々の出来」と評価される、ベイルの活躍に次ぐ第2の要因だ。例えば、1ゴール1アシストをこなした3月末のスウォンジー戦(2-1)。ボールを持てる新CBは、ベイルによる浮き球のリターンを巧みにコントロールして先制点を奪い、中盤からベイルにパスを通して追加点を演出している。
スウォンジーの後者は、CBにしてキャプテンを務めるチームの支柱そのものだ。堂々のプレミア9位も、リーグカップ決勝を前に温存された1試合を除く、37試合に先発フル出場を果たし、リーグ最高レベルのクリア数とブロック数を記録したウィリアムズの守りに依存する部分が大きい。
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右サイドは、マンUで定位置を勝ち取ったラファエウ。
得意の攻撃参加では、単なるオーバーラップではなく、インサイドに流れる動きが効果的だった。2位との差を15ポイントに広げた2月後半のQPR戦(2-0)で、相手の度肝を抜いた先制の23mミドルも、正面でセカンドボールを拾える位置にいたからこそ打てた一撃だ。守備面でも、降格の運命にあった相手の右SB、ジョゼ・ボシングワとは対照的な力強さ。今季から「ガリー・ネビルの2番」をつける22歳は、入団5年目にして後継ぎの資格を証明した。
左サイドに回ってもらうパブロ・サバレタは、守備の安定感はもちろん、攻撃参加の意欲と威力でもラファエウに勝るとも劣らなかった。便利屋のイメージが強いが、期待外れに終わったマンCでは貴重な今季の実力者だ。
降格危機のストークを救った守護神と新監督の辣腕。
GKは、予想外の残留争いに巻き込まれたストークで気を吐いた、アスミル・ベゴビッチ。PFA(選手協会)選定のベストGKは、マンUのダビド・デヘア。リーグ戦での無失点試合数最多を意味するゴールデン・グローブ賞は、マンCのジョー・ハート。他にも、チェルシーのペトル・チェフ、リバプールのペペ・レイナが好セーブを連発したが、この5名中、リーグ戦全試合出場で敵の前に立ちはだかった守護神は、ベゴビッチしかいない。
最後に監督だが、今季は7名が解雇の憂き目に遭った。第1号となったロベルト・ディマッテオは、攻撃姿勢を強めたチームに失点が続いた昨年11月にチェルシーを追われた。最終節の翌週には、守備重視でプレミアに定着したストークでさえ、「新たな方向性を目指す時」として、ファンも同調する中でトニー・ピューリスが退団となる。国内の経営陣と観衆による攻撃サッカーへの意識と要求の強まりを、改めて物語る解任例だ。
その意味でも、昇格2年目のスウォンジーを受け継いだミカエル・ラウドルップの手腕が光る。
資金力の乏しい小粒なパスサッカー集団は、チームの参謀だったブレンダン・ロジャーズ監督と、中枢だったジョー・アレンをリバプールに引き抜かれ、開幕前には降格さえ危惧された。ところが、新監督は、相手と戦況によっては後方を意識し、カウンターで縦に速く攻めるオプションを加え、昨季11位をトップ10内に押し上げた。