野球善哉BACK NUMBER
巨人投手陣は「WBC後」も死角なし。
飛躍する高卒2年目左腕、今村信貴。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/03/14 10:31
3月9日のオリックス相手のオープン戦にて。「しびれましたね。足がブルブルしました。腕は振れました」と試合後に初々しいコメントを残した今村。
高卒2年目の左腕、今村が手薄な投手陣をバックアップ。
キャンプ中やオープン戦では、宮國椋丞、ホールトンら昨季のローテーション投手のほか、昨季プロ初勝利を挙げた小山雄輝や笠原将生、先発に転向する高木京介、大物ルーキーの菅野智之、2年目の松本竜也、今村信貴らがしのぎを削っている。
連日これらの投手の動向が報道を通して伝わってくるが、なかでも注目したいのは2年目左腕・今村信貴である。
先述したように、巨人のWBC組の投手は左腕が3人いる。不測の事態に備えて、高卒2年目とはいえ、今村の存在がクローズアップされてきているからだ。
'12年ドラフト2位で入団した今村は、太成学院大高時代に甲子園出場はなく、無名の存在だった。だが、かなりの実力者としてドラフト前からスカウトたちの中では評判の選手だった。
太成学院大高では1年夏からベンチ入り。1年秋にはチームのエースとなったが、彼の評判が上がるようになったのは2年秋の地区大会のころから。大阪府大会準々決勝で強豪・履正社と対戦。翌春に、センバツでベスト4入りする履正社に、今村は高いポテンシャルを見せつけたのだった。
甲子園未出場ながら、素質を見抜いた巨人が2位指名。
ほぼストレートだけで勝負を挑んだ今村のピッチングは、4失点で敗れたとはいえ、T-岡田らを育てた履正社の岡田龍生監督も舌を巻いたほどだった。
「ホンマ、思っていた以上の素晴らしいピッチャーでした。手元で伸びてましたからね。来年のドラフト上位で間違いないんちゃいますか。あんなピッチャー、そうはおらんでしょ」
今村の良さはストレートの切れ。最速146キロといわれていたストレートは、数値よりもベース上で威力を発揮する。球持ちが良いため、打者の予想より手元に伸びを感じ、差し込まれてしまうのだ。
高校3年夏は4回戦で金光大阪に敗れた。そのため、全国区の評判にはならなかったのだが、ドラフトを前にしたころ、あるスカウトはこう話していたものだった。
「夏の大会でも見たけど、それからの短期間でも成長している。ストレートは切れているし、変化球もよくなっていた。高校野球を引退してからしっかりと練習していたからやろう。こういう選手はプロに入っても伸びる。大会しか見ていないスカウトと練習を見に行ったスカウトとで評価は分かれるだろう」
そんな今村を巨人は2位で指名したのだった。