野球善哉BACK NUMBER
巨人投手陣は「WBC後」も死角なし。
飛躍する高卒2年目左腕、今村信貴。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/03/14 10:31
3月9日のオリックス相手のオープン戦にて。「しびれましたね。足がブルブルしました。腕は振れました」と試合後に初々しいコメントを残した今村。
WBC出場選手のコンディションがペナントを左右する!?
もちろん、WBCに出場した選手のすべてがその年のシーズンで苦しんだわけではない。
WBCで5試合に登板し、無失点だった杉内俊哉(当時ソフトバンク)はシーズン15勝、交流戦ではMVPに輝いている。WBCで中継ぎ登板が多かった田中将大も、開幕7連勝の好スタートを切ると、杉内と同じく15勝を挙げた。
どのような調整法が選手にとってプラスに働き、どのような調整法だと選手に負担をかけるのか。
WBCに参加していくことと並行して、日本の野球界全体で、WBCにおける選手の体調や練習方法がどうあるべきかを精査していかなければいけないと思うが、現時点では、そのような動きがあると耳に入ってきてはいない。
現状では、WBCに出場したことによって出てくるコンディショニングは個人や所属チームにゆだねるしかなく、シーズン中のパフォーマンス低下は、明確な処方箋をもって避けることは困難なのかもしれない。
そうなると各球団がすべき対策は、侍ジャパンの戦士たちの離脱をも想定した備えをいかに用意しているか、ということになる。
今年に限っては、各球団のリスクマネージメントがペナントの鍵を握ってくるのではないだろうか。
7人もの選手を派遣した巨人だが、原監督は余裕綽々!?
もっとも厳しい状況に置かれると予測されるのが、侍ジャパンに投手・野手を合わせて7人の選手を派遣している巨人である。
特に、投手陣が4人のうち左腕が3人というのは、不測の事態の時、チーム編成上の影響が出てもおかしくはない。
だが、原監督は、それも十分承知しているかのような言葉を残している。
「WBCは選手にとっても、監督にとっても特別な大会。特別な大会に出るために2、3月はチームにいる選手とは違うことをして過ごしてきているわけですから、シーズンが始まって彼らに頼ってしまうのは良くないと思います。開幕にはいないものだと考えて進めている」
さすがは前回大会のWBC監督である。
「多くの選手にチャンスを与える」という若手選手への煽動もあるだろうが、WBCという大会の重さを熟知しているからこそ、シーズン開幕後の影響を念頭において備えようというチーム作りが見える。