プロ野球亭日乗BACK NUMBER
栗山vs.吉井、高木vs.権藤……。
野手出身監督と投手コーチの宿命。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byMami Yamada
posted2012/11/13 10:30
「栗山監督と全然合わなかった。チームに迷惑をかけてしまった」と解任の理由を自ら語った吉井投手コーチ。リーグ優勝を飾った日本ハムだが、福良淳一ヘッドコーチ、清水雅治外野守備走塁コーチというチーム幹部が出ていく事態にもつながった。
投手陣への采配を森ヘッドに全面委任した落合前監督。
そしてもう一つが全面委託型だ。これは昨年まで中日を指揮した落合博満前監督と森繁和ヘッドコーチの関係にあたる。
「おれは投手については素人。監督になって自分で先発を決めたのは、1年目の開幕投手に川崎(憲次郎現ロッテコーチ)を決めたときだけ。あとは全部、こっち(森コーチ)が決めていた」
落合前監督は言う。
もちろん継投から投手に関するベンチワークは、すべて森ヘッドが仕切っていた。あるときの投手交代では、落合監督が間違えて違う投手の名前を審判に告げてしまい、ベンチに戻ると森ヘッドに“大目玉”を食らったという事件もあったという。
もともとが投手依存型のチームだっただけに、投手起用は生命線。そこは信頼する専門家の意見を受け入れ、監督はチーム全体が機能的に動くようにマネージメントする。それが落合流だったわけだ。
野手出身の監督が、職人型の投手コーチとうまくやるには、この方法しかないだろう。
野手出身の監督と職人型の投手コーチは水と油の関係だ。
「野手にはピッチャーのことは分からない。だからオレにすべてを任せてくれれば、投手のことはうまくやってみせる」
これが職人型の投手コーチに共通した意識である。しかもこのタイプはプライドをないがしろにされるのを一番、嫌うのである。
吉井コーチも権藤コーチも職人型の信念の持ち主だった。監督がこのコーチに自分の思い通りの投手起用をやらせようとしたときには、対立は当然の帰結だった。
野手出身の監督と投手コーチが幸せな関係を作るには、投手起用をコーチに丸投げするか、それとも調整型のコーチに取り替えるか。どうやらその二つの選択肢しかないようである。