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箱根駅伝“シン・山の神”青学大・黒田朝日を直撃…“衝撃の山上り”秘話「良くて3位くらいかと」「(5区は)12月中旬には決まっていた」「“シン”の字は…」
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酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byNanae Suzuki
posted2026/01/02 21:19
山上りの5区で区間記録を一気に2分近く更新する衝撃的な記録を打ち立てた青学大の黒田朝日(4年)。レース後に本人を直撃すると…?
「11月のMARCH対抗戦が終わって5区もあるなと。1年生の5区起用も(腹案として)持っていましたが、1~4区の(候補)選手がMARCH対抗戦以降、大きく成長した。これなら大きく(他校に)離されることはない。黒田を5区に持ってこられる。12月最後の1週間で決断しました。ほかに2区を走れる選手を育成できた結果なんです」
直近の11年で8度の総合優勝を誇る名将らしく整然とした口調で振り返ったが、3人をメンバー変更した初日は薄氷を踏むレース展開だった。実は当初のプランに狂いが生じていたのだ。
1区での起用を予定していた荒巻朋熙(4年、福岡・大牟田)が12月31日に38度の発熱を伴う胃腸炎を患い、4区を予定していた小河原陽琉(2年、千葉・八千代松陰)を急きょ1区に配置転換。アクシデントが響いたのか、小河原は区間16位に沈み、出遅れてしまう。2区以降も快走とまでいかず、4区の平松享祐(3年、愛知・中部大第一)が区間3位で好走したが、前述のようにトップの中央大には3分24秒の差をつけられていた。
「正直、トップは厳しいと…」
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距離にすれば実に1km以上後れを取る劣勢である。さすがの黒田も「正直、トップは厳しいとは思っていました。よくて3位ぐらいになるのかなと」と振り返るほど想定外の窮地だった。
だが、仲間たちが走っているとき、原はエースの胸中を察して連絡を入れていた。
「最初、オーバーペースにならないように気楽に行きましょう」
それは必勝を義務づけられたキャプテンの気負いを消す言葉になった。前回大会で5区3位の実力者である城西大の斎藤将也(4年、福井・敦賀気比)とほぼ同時に走りだすと、2km手前で振り切って、箱根の山道に分け入った。
「(斎藤と)並んで、ある程度、一緒にいくかなと思ったのですが、走りだしてから自分のペースでいこうと。気にしていなかったんです」
急勾配の坂を駆け上がっているのに、殊更、鋭く腕を振ることもなく、まるで平地を走っているかのような、滑るような動きだった。それは黒田の心模様のようだった。
みるみるうちに3分以上離れていた中央大の柴田大地(3年、京都・洛南)とのタイム差が縮まっていく。
函嶺洞門 3分15秒
大平台 2分26秒
宮ノ下 1分36秒
その頃、先行するランナーたちの間でも激しいつばぜり合いがくり広げられていた。

