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「ママになってもラグビーをしたい」27歳で出産→競技復帰へ…女子ラグビー元代表候補・青木蘭が語る“育児のリアル”「一番ムカついた言葉は…」
text by

大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/11/23 11:02
高校時代に全国制覇を達成するなど多くの実績を残してきた女子ラグビーの青木蘭。1児の母となった今、再びグラウンドへ戻ることを決めた
――蘭さん自身「ぜひこれを伝えたい」と思って発信していることは何かありますか?
青木 私はラグビー選手といっても日本代表に選ばれたわけでもない、ごく普通の選手です。プレーヤーを続けようとしても大きなスポンサーがついてくれるわけではないし、環境を整えてくれるスタッフが周りにいるわけでもない。サポート体制は自分で作らなきゃいけない。サポートするメリットは自分で文字化して発信しないといけないんです。
そんな普通の選手である私がなぜ自分のことを発信しているかと言うと、ラグビーがそれだけ良いスポーツだと思うからです。女子ラグビーの魅力は、女性が激しいスポーツをやることと言われがちですが、私はそれよりも、男女の性別だったり国籍だったり、体の大きい小さいなど関係なく誰でも平等にプレーできることだと思っています。有利不利はあっても、違う個性を持つもの同士がチームを作ってプレーする。仲間同士で力を合わせなきゃ試合を戦えないし、対戦相手へのリスペクトも自然に生まれる。ちょっと大げさに言うと、ラグビーは世界を平和にすると思っているんです。
「ラグビーを続けた先にどんな人生が?」その答えに…
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――その魅力を次の世代に伝えていきたいと。
青木 今は女子ラグビーを取り巻く環境もだいぶ整ってきて、プロ的に競技に専念できる選手も増えてきました。でも、その恩恵を受けられるのは本当にトップの選手だけ。逆に見ると、トップを目指す選手以外はラグビーを続けにくい環境になっている。
だけど、ラグビーはトップのレベルだけじゃない。私は小さいころにこのスポーツに出会って、たくさんのものを与えてもらってきた。日本代表にはなれていないけれど、ラグビーのおかげでたくさんの幸せを得られた。
だから、それを次の世代に伝えていきたいと思っているんです。トップのエリート選手じゃなくても、ラグビーを続けた先にはどんな人生があるのか? という問いに対して、ひとつの答え、ひとつの例になりたいと思うんです。
――実際に復帰を目指してトレーニングを再開して、今考えている目標と、到達への自信を聞かせてもらえますか。
青木 11月から15人制の国内シーズンが始まります。関東大会は1月の頭まで、そのあと全国大会に勝ち進めば2月までシーズンが続くことになる。そこまでの間にメンバーに入って、試合に出たいと思っています。もちろん簡単なことじゃない。でも、目標をはっきり立てないと私自身が頑張れないし、周りもどうサポートしていいかわからない。そこを決められるのは私だけだから、そこは覚悟を決めています。
――試合に出るために必要なことはどんなことですか。それを達成しようとするモチベーションの中で、娘さんはどのような存在ですか。
青木 体に関して言えば、筋肉量が絶対的に落ちているので、単純に体重を5kgアップしないといけない。筋力で言えば10%上げないといけない。簡単にできることじゃないですが、やり続ければできると思っています。
娘に対しては、母である私が自分の幸せを追いかけている姿を見せたいと思っています。母親になったからと言って、犠牲になってはいけない。自分の幸せを追いかけている親の子は、自分の幸せを追いかけられる大人に育つと思う。なりたい自分が二通りあったら、両方を選べる大人になってほしい。そのために、自分がそういう姿を見せたい。
――そのために復帰して、本気で試合出場を目指しているのですね。
青木 女性のスポーツには、本気=トップを目指す、他のことを犠牲にして打ち込む、という空気感みたいなものがあるけれど、そんなことはないと思うんです。スポーツは人を幸せにするものだと思うし、いろいろなかかわり方があっていい。中断して戻ってもいいし、もしもトップレベルに戻れなくてもできるレベルで楽しむことで人生を豊かにできればそれでいい。自分を否定せず、何も犠牲にすることなく、両方を本気で楽しみたい。その姿を見せていきたいと思っています。

