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悪童と呼ばれた33歳クーパーってどんな人? “しょうもない”イタズラ伝説とピッチで輝く“ひらめき”《ラグビー2部にも大物》
posted2021/09/17 17:00
text by
倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)Yohei Kuraseko
photograph by
Getty Images
クウェイド・クーパーは健在だ。この2シーズン、日本の2部・近鉄ライナーズでプレーをしていても、さびついてなどいない。
9月12日の南半球4カ国対抗戦「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」第3節の南アフリカ代表戦にSOで先発し、オーストラリア代表を今大会初勝利に導いた。2017年6月のイタリア戦以来となる4年ぶりの代表戦であろうとも、憎らしいほど落ち着いていた。
憎らしさは、ラストワンプレーに特に表れた。
25-26の1点ビハインド。時計は、後半40分を過ぎていた。右サイドの角度がある位置から、外せば負けのペナルティーゴール(PG)。いつものとぼけたような涼しい顔が画面に映し出されたあと、右足を振り抜いた。オーストラリア・クイーンズランド州ゴールドコースト、シーバス・スーパー・スタジアムの夜空に、高く美しい軌道が描かれる。黄色と緑のユニホームに歓喜の輪ができた。ニュージーランドに2連敗を喫したワラビーズにようやく笑顔が戻った。
8本のキック成功、自己最多の23得点
11年度のスーパーラグビーでレッズを初優勝に導き、11、15年W杯に出場したファンタジスタも、もう33歳。キレキレのランは幾分、影を潜めた。しかし、実力は依然として国際レベルを保っている。
19年W杯王者と対戦したこの日、8本のキックを全て決めた。71キャップ目となった代表戦で、自己最多の23得点。チームのトライは1つだけだっただけに、経験が詰め込まれた右足が勝因の1つになった。
プレーもさることながら、印象的だったのは、「劇的サヨナラPG」の直前の仲間とのやりとりだ。ジャッカルで値千金の反則を奪ったSHニック・ホワイトのユニホームの胸ぐらを両手でつかんで強引に起き上がらせ、抱きしめた。
なんて乱暴な喜びの表現なんだと驚きつつも、近鉄で見る姿と同じだなと思い、クスっとしてしまった。