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プロ野球PRESSBACK NUMBER
CS天王山「王イズムの伝統」を忘れる勇気を…ソフトバンクが王道より“開き直り”総力戦を選ぶべき理由「もう、コイン投げみたいなもんだから」
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/10/20 11:05
王イズムを継承する小久保監督だが、崖っぷちに追い込まれた今こそ君子豹変するときではないか
ポジションの関係や、野手層を考えた時、普通は、このように主力に代打を送ると、終盤に勝負をかける際、あるいは逃げ切りを図るときの守備固めの陣容に、どこかしら“穴”が空く可能性が出てくる。しかし、今のソフトバンクにその不安はほとんどない。牧原大成は外野と二塁、栗原陵矢も右翼、左翼、一塁、三塁をこなし、かつての本職は捕手。それぞれのメンバーにオプションが多く、その組み合わせも広がる。
惜しげもなく、手持ちのカードをつぎ込んでいけるはずなのだ。
それこそ、これでもかとばかりに、勝負どころで、次から次へと持てる戦力を投入していくのが、短期決戦における必勝の鉄則なのだ。
総力戦にすべてをつぎ込め
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第6戦は、間違いなく、総力戦になる。
ソフトバンクは、中4日でリバン・モイネロが先発のマウンドに立つ。一方の日本ハムも4年目の右腕・達孝太が中4日で先発、さらにエース・伊藤大海が中2日ながら、ブルペンでスタンバイする準備を進めている。
今シリーズ4本塁打と絶好調のフランミル・レイエスは、第5戦は1安打のみも、3四球を選ぶという、その我慢強さも光る。ソフトバンクは5試合で計9得点止まり。しかし、最後の最後。もはやデータ度外視。王者の意地と、挑戦者の執念の激しいぶつかり合いだ。
だから、選手の調子が悪いと見れば、山川にも牧原にも栗原にも、遠慮なく代打を送ればいい。とにかく、なりふり構わず、どんどん選手をつぎ込み、何が何でも勝つ。
王道ではなく、がむしゃらに行くのだ。
「もう、コイン投げみたいなもん」
最後に、球団会長・王貞治が、5戦目を見届けて帰路に就く前、我々報道陣に残したコメントを、記しておく。
「もう、明日はコイン投げ、みたいなもんだからさ。明日、明日!」
表が出ても、裏が出ても、もう恨みっこなし。
最後の大一番、その開き直りこそが、今のソフトバンクには必要なのだろう。
〈全2回の2回目/はじめから読む〉

