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ソフトバンクに現れた“27歳の怪物”「じつはボディビルダー目指していた」現地記者も驚いた…160キロ守護神が激変するまで「ここまで人間変わるとは…」
posted2025/09/29 11:09
ソフトバンクの最強守護神・杉山一樹。なぜ覚醒したのか?
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田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
JIJI PRESS
9月27日、ソフトバンクは敵地・ベルーナドームで2年連続パ・リーグ優勝を決めた。胴上げ投手となったのは今季途中から守護神に定着した杉山一樹だった。
「優勝の瞬間にマウンドにいる。小学校3年生で野球を始めてから、一度も経験したことがありませんでした」
杉山一樹とは何者か?
優勝マジックが1桁になった頃、杉山にどんな喜び方を想像するか訊ねた。
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「そうですね。僕は海野(隆司)をハグしたい。優勝を決めたピッチャーって捕手と抱き合うじゃないですか。どんなガッツポーズをするとかより、たぶんその時マスクを被っている海野に『来い!来い!』って手招きすると思います。正直、シーズン序盤はぶつかったこともありました。その中でずっと頑張って、優勝できたのはアイツがたくさんマスクを被ってきたおかげもあると僕個人的には思っているので」
杉山は最後のアウトを三振で締めるのをイメージしたような身振り手振りで話してくれた。実際のラストシーンは6―4―3のダブルプレー。それでも杉山は、一塁後方のベースカバーに入っていた海野の方を見ていて、歓喜のお祭り騒ぎの中でしっかりと海野を抱きかかえて喜び合っていた。
杉山の言動を見て思った。マウンドでの威風堂々たる姿も含めて本当にたくましい守護神となった。
あの千賀滉大も絶賛していた…
今年6月、シーズン序盤から不振だったロベルト・オスナに代わって抑えを任されるようになった。杉山は昨年もシーズン50試合に登板して防御率1.61の成績を残している。とはいえ、実績を見ればチームには松本裕樹や藤井皓哉という優秀なリリーバーもいた。当初は小久保裕紀監督も倉野信次一軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も「流動的に起用をする」と守護神は固定しない方針を明言していた。
杉山を昔から知る者の共通認識は〈間違いなく能力は球界トップクラスだけど、どこか頼りない〉。入団1年目はキャンプ中に打球処理で右足首を痛めて戦線離脱。プロ3年目には最速160キロをマークしてみせたが、とにかく制球難で、首脳陣が安心してマウンドに送り出せるピッチャーではなかった。
「見ての通り、モノが凄いのは分かると思います。ただ、普段はホワーンとしていて、おバカ(笑)。野球はマジメですけど」
そんな風に杉山を評したのは、ソフトバンク時代の千賀滉大(現ニューヨーク・メッツ)だった。たしかに言い得て妙なのである。

