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プロ野球PRESSBACK NUMBER
CS天王山「王イズムの伝統」を忘れる勇気を…ソフトバンクが王道より“開き直り”総力戦を選ぶべき理由「もう、コイン投げみたいなもんだから」
posted2025/10/20 11:05
王イズムを継承する小久保監督だが、崖っぷちに追い込まれた今こそ君子豹変するときではないか
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph by
Hideki Sugiyama
現ソフトバンク監督・小久保裕紀が、王貞治監督のダイエーが初の日本一に輝いた1999年、4番を任されながらも、シーズン中は打率2割前後という長き不振が続いたことがあった。
チームの勝利に貢献できていない。その自責の念から、小久保は意を決し、監督室の王にこう直訴したのだという。
「僕を、4番から外してください」
滅多なことでは打線を動かさない
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王は、即座に却下したのだという。その理由を、後日、聞かせてもらったことがある。
小久保を4番から外すと、誰か、代わりに入れる4番は、レギュラーの中から、別の打順を打っている選手になるのが濃厚だ。3番打者なのか、5番打者なのか。いずれにせよ、4番を動かすことで、全体を大きく動かさなくてはいけなくなる。
中心を動かすと、打順のすべてに大きく波及してしまう。王は、それを避けたかったというのだ。だから、軸はブラさない。滅多なことでは動かさない。
それを“王イズム”と呼ぶのなら、これを受け継いだのが小久保でもある。
監督1年目、独走でリーグ優勝を果たした2024年、山川穂高が不変の4番。レギュラーシーズン、ポストシーズン、日本シリーズの全試合で「4番・山川」を貫いた。
今シーズン、苦境から逆転で連覇できた理由
しかし、2年目の2025年は、その“王イズム”を返上せざるを得ない状況に陥った。
野手なら、柳田悠岐、近藤健介、栗原陵矢、今宮健太。投手なら、カーター・スチュワート、ロベルト・オスナ。昨季のリーグVを支えた主力たちに、序盤から戦線離脱が相次いだ。
さらには山川も打撃不振で2軍降格を経験するなど、指揮官の持論ともいえる「固定メンバー」での戦いができなくなった。その混乱は、5月1日の時点で最大借金7の最下位に象徴されている。その苦境から抜け出しての大まくりでつかんだ2025年の連覇は、開幕の時点では2軍にいた柳町達、開幕スタメンの座を逃した牧原大成ら、その“固定外”だったメンバーの躍進があってのことだった。

