CS天王山「王イズムの伝統」を忘れる勇気を…ソフトバンクが王道より“開き直り”総力戦を選ぶべき理由「もう、コイン投げみたいなもんだから」 

　このシリーズも、左わき腹痛の近藤を欠き、山川の長引く不調の中、4番の重責を担った中村晃は、4戦目の走塁中に一塁塁審と衝突、頭部をグラウンドに打ち付けた影響で、5戦目はベンチから外れた。ない袖は振れない中、柳田を4番に、4戦まで計9安打をマークしている今季の最高出塁率・柳町を3番に置き、今CSで頼りになる2人を中軸に据えたのは、4戦目までのチーム総得点数がわずか8という中で、打線のつながりをどうにかして生み出すための、いわば最善の策でもあった。

打順変更も機能せず3連敗

第5戦で4番に置いた柳田も、序盤は2三振。大勢が決したのちの1安打のみに終わった　©Hideki Sugiyama

　しかし、実らない。柳田は2三振、柳町も1安打のみ。牧原は3打席無安打に終わり、今シリーズ、15打席でいまだヒットがない。

　何をやっても、うまくいかない。その悪循環から抜け出せないままの3連敗。

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　しかし、泣いても笑っても、この1試合。勝てば天国、負ければ地獄。

　ならば、原点に返る——。

　精彩を欠く山川を4番に戻し、無安打の牧原も外さない。ここ4試合で8三振の栗原陵矢にも、クリーンアップを任せる。

　それが、2025年の型。レギュラー陣への熱き信頼の証でもある。

　最後は、だから、これで行く。

“王イズム”をいったん忘れるべきだ

　その“王イズム”を、今回ばかりはいったん脇に置いて、最後の最後、のるかそるかの大一番だからこそ、全選手の「調子」だけにフォーカスして、フラットに考えるべきなのだ。

短期決戦を得意とした工藤監督　©Naoya Sanuki

　先々代の監督・工藤公康は、短期決戦の鬼と言われた。

　在任7年の間、2017年から4年連続を含む日本一5度。18、19年はいずれもリーグ2位からの下剋上だ。

　2019年のCSファイナル初戦。1点を追う8回2死一、三塁で、内川聖一に代打・長谷川勇也を送って同点打、逆転勝利へとつなげた。日本シリーズの第4戦でも、2点リードの7回1死一、二塁と突き放すチャンスで、正捕手の甲斐拓也に代打・長谷川勇也を投入。二ゴロ失で貴重な4点目を奪って逃げ切り、3年連続の日本一を決めている。

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