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「鈴木淳之介めっちゃいい」ブラジル撃破の夜に絶賛の声…恩師が明かした22歳新鋭DFの素顔「日本代表になった今も“調子のってる”なんて聞いたことない」
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安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO SPORT
posted2025/10/17 11:03
ブラジルから初めて勝利したサッカー日本代表。左CBとしてスタメン出場した鈴木淳之介(22歳)は攻守に躍動した
もう一人、鈴木の人間性がわかるエピソードを教えてくれたのは、高校時代にエースストライカーとしてボランチの鈴木とホットラインを形成した名城大4年の松永悠碁だ。当時、突然ベルマーレのユニフォームを身につけた相棒の姿に驚いたという。
「高2の冬、選手権を控えた壮行試合の後、淳之介が両親と撮影をし始めたんです。(湘南ベルマーレの)ユニフォームを着て、横断幕をもって……みんな頭に“ハテナ”が浮かんで(笑)」
後にクラブから発表されるリリースに使用する写真撮影を行っていたのだが、この時はまだサッカー部の仲間内に“Jリーグ内定”を伝えていなかった。周囲はざわついた。
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「その場でベルマーレに内定したことを知りました。決まっているんだったら早く言ってよ!と言ったら、淳之介は『言うほどのことじゃないから』って。普通なら、練習参加して評価高かったとか、オファー来たとか、自慢してもおかしくないですよね。なのに淳之介は何も口にしなかったどころか、そんな素振りすらも見せなかったです。Jリーグ内定が決まってからも学校生活に変わりはなく、『俺はプロだ』みたいな雰囲気も出さない。日本代表になった今も自分から(偉ぶって)プロの世界の話をすることはないですね。そういう謙虚な姿勢は人として尊敬しているし、見習わないといけないです」
W杯へのサバイバルに名乗り
周囲の特徴や戦況を把握した上でチームのタスクを理解し、実直に、献身的に戦う。これは森保一監督が求めるパーソナリティだ。高校時代の話を聞くだけでも、まだ数試合ながらも日本代表で信頼を積み重ねている理由が少し窺える。
ただ、期待を込める一方で、恩師は忠告も忘れなかった。殊勲のブラジル戦での課題を指摘する。
「守備では課題が出た。(エンリケに)縦に2回抜かれていたので、あれで失点していたら評価が変わっていたかもしれない。湘南では止められていても、対ブラジルには届かなかった。彼にとっても今まで体感したことがない衝撃だったと思う」
ブラジル戦のミックスゾーン。相変わらず口数は少なかったが、丁寧に紡ぎ出した鈴木の回答が仲井の言葉にリンクする。
「他の(日本代表)選手は多く経験しているのですが、自分としてはこういう相手を初めて経験して一つ明確な基準ができたので、これを忘れずにデンマークに帰っても頑張りたいと思います」
見据えるは来年のW杯。鈴木淳之介は多士済々の日本代表の競争に確実に名乗りをあげた。


