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「文句と言い訳はなくそう」マリノスで“現プレミア智将の通訳”から監督へ…“3年連続昇格”J3クラブ躍進の舞台裏を包み隠さず語る
posted2025/09/29 17:00
プロ時代にさしたる実績のない指揮官が、Jリーグの舞台で着実に結果を残している理由とは
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Tsutomu Kishimoto
栃木シティ(以下栃木C)の躍進が目覚ましい。2023年、関東リーグ1部からJFLへの昇格を果たすと、JFLでも2位高知ユナイテッドSCに勝ち点9の大差をつけて初優勝。見事1年でJ3昇格を成し遂げた。さらにJ3でも勢いは止まらず、J2昇格も決して夢ではない。
栃木Cでいったい何が起こっているのか。躍進の立役者は、2022シーズンから監督に就任した今矢直城である。
今矢には、選手としてこれといった経歴はない。主なキャリアをオーストラリアで過ごし、一時はスイスのクラブにも所属した。筆者が知り合ったのも、彼がヌーシャテル・ザマックスに在籍していた2003年のことだった。
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引退後は指導者の道に進み、早稲田ユナイテッド(東京都2部、東京都1部、関東社会人2部)を8年、横浜F・マリノスでアンジェ・ポステコグルー監督(セルティック、プレミアのトットナムを経て今季からノッティンガム・フォレスト監督)の通訳を経て清水エスパルスのコーチを歴任後、2022年に栃木シティ(以下栃木C。当時は関東社会人1部)の監督に就任した。プロとしての仕事は栃木Cが最初である。
いったい今矢は、栃木Cの何を変え、チームをどこに導こうとしているのか。今矢に話を聞いた。そのインタビューを3回に分けて掲載する。まずはその第1回から(全3回/第2回につづく)。
「J1を目指す意志はあるのか」社長への直球質問
――就任当初、クラブは関東1部リーグでした。野心や長期的な展望があるのを踏まえた上で引き受けたのですよね。
「そういうことです。前年も関東リーグから上がれなくて、9月頃に施設を見に来たとき、最初に大栗崇司社長へ『J1を目指す意志はありますか』と尋ねた際、『あります』と即答されたのがいい印象だったのと、プロジェクトとしても面白い。自分の力も試せると思いました」
――長期的な展望になるわけですが、確信がない限り引き受けないですよね。
「自身の経験で大きかったのは、マリノスに行かせてもらった際、アンジェさんの1年目だったことです。どういうチームを作るのかを、間近で見させてもらった。自分と重なりあった部分もありますし、早稲田ユナイテッドの8年間で新たな発見もあった中、最後はやっぱり自分がやる。確信はなくとも、チャレンジしたいなという思いはありました。
栃木で掲げた「攻撃的サッカー」と“言い訳禁止”
――アンジェの1年目は魅力的だったけど、逆にリスクも大きくて両極端に振れていた。ただトライアンドエラーを重ねたのを間近で見たことが役に立ちましたか。
